小児科医としてがん患児を診るときは、その家族にも目を配る必要がある。しかし医師が患児のきょうだいに院内で会う機会は少なく、視野から外れやすい。小澤さんは、がん患児の「きょうだいケア」に力を入れてきた。
低年齢で病棟に入れないきょうだいとの接点として考えたのは、待合での声かけ。「“誰だれのお兄ちゃん”ではなく、その子の名前を呼ぶこと。時間もお金もかかりません」。4年前からは有志の医療スタッフを集めた「きょうだいレンジャー」ときょうだいたちで病棟をツアーするなどのイベントも行っている。きょうだいを主役にし、同じ仲間がいて、きょうだいも家族の一員だと伝えることが目的だ。
小澤さんがきょうだいに目を向けたのは、終末期患児の自宅を往診したのがきっかけ。「眠っているような状態のお子さんのそばに弟さんがいて、お兄ちゃんのことはどう伝わっているのか、どういう思いを抱えているのか、とても気になりました」。約1年間かけて調査をしてみると、きょうだいは孤立していて、コミュニケーションに飢えていることが分かった。
きょうだいと繋がり続けるためには周囲の協力が欠かせない。多職種ミーティングでも折に触れてきょうだいのことを話題に上げ、病棟スタッフ全員が当たり前にきょうだいを気にかける文化を10年以上かけて作り上げた。
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