多発性硬化症(multiple sclerosis:MS),視神経脊髄炎(neuromyelitis optica spectrum disorders:NMOSD)は,中枢神経系の自己免疫性疾患であり,前者はオリゴデンドロサイト,後者はアストロサイトを主な標的とする。
再発寛解型あるいは緩徐進行性の臨床経過,頭部・脊髄MRIにおける多発脱髄巣の存在,髄液オリゴクローナルバンド陽性,他疾患の除外により診断する。
難治性の嘔吐,吃逆,片眼または両眼の視力障害,複視,四肢麻痺,排尿障害などが生じる。疾患特異的な血清アクアポリン4(AQP4)抗体の存在を確認する。ELISA法で陰性の場合は,cell-based assay法により確認することが望ましい。
MS,NMOSDともに,症状が起こった際(再発時)の急性期治療と,寛解期に継続する治療の2つにわけられる。治療に際し,免疫抑制に伴うB型肝炎ウイルスの再活性化や易感染性に対する対策が十分であるか確認が必要である。
炎症を素早く止めるため,ステロイドパルス療法を実施する。症状の改善が乏しい場合には,2コース以上繰り返すこともあるが,早急に血液浄化療法に切り替えることも重要である。特にNMOSDの再発では発症(再発)から7日以内に血漿交換を実施することが症状改善に重要とする報告もある1)。ステロイドを使用する際にはH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬を併用する。
再発と病態進行の予防を目的に薬物療法を導入し継続する。国内では8種の疾患修飾薬が使用可能である。薬剤により,効果とともに注意するべき副作用が異なり,患者背景に応じて患者とともに決定する。決定に際し,予後不良因子の有無,妊娠可能年齢かどうか,進行性多巣性白質脳症の発症に関わるJCウイルス(JCV)に対する抗JCV抗体の有無等も考慮する。効果が不十分な場合には疾患修飾薬の変更を積極的に検討する。
再発予防を目的に薬物療法を導入し継続する。従来,経口ステロイド製剤と免疫抑制薬の併用が治療の中心であったが,最近,AQP4抗体陽性例においては,国内で適応となった5種の分子標的治療薬のいずれかを導入することで,これまで再発予防に中等量以上のステロイド製剤を要した症例においても,ステロイド製剤の減量・中止をしつつ再発を抑制できるようになっている。
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