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【識者の眼】「医師の適正配置の促進策」島田和幸

No.5149 (2022年12月31日発行) P.60

島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)

登録日: 2022-12-16

最終更新日: 2022-12-16

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診療報酬制度で7対1看護師配置要件を設定したことによって、看護師争奪戦の勃発という副作用もあったが、結果として急性期病棟の看護体制が手厚くなり、看護師の勤務環境は改善した。ところで、医師に関しては看護師のような配置基準はない。一般病床か療養病床かなどの違いによって、医療法によって必要最低限の標準医師数が定められているが、1人の医師が受け持つ入院患者数は、数人から数十人まで病院・病棟によって大きくばらついている。医師数は、急性期かつ重症であるほど多く、慢性期かつ軽症ほど少なくなる。

医師の働き方改革を支援するなどの目的で数年前に導入された「地域医療体制確保加算」は、救急搬送の多い繁忙な急性期病院が算定できる。実際、本院では医師の時間外報酬や新たな非常勤医師の採用などに要した費用増加に、この加算を充当している。今年度導入された「急性期充実体制加算」は、ICUなどを有する高度急性期病院に対応したものである。これらは、実績のある急性期病院への医師の再配置を診療報酬制度によって後押しするものである。

地域医療構想がめざしている病院機能の分化と集中は、各病院が受け持つ機能に適う医師の専門性と人数を配置しなければ絵に描いた餅に終わってしまう。総合診療専門医、救急専門医、感染症専門医など、各科を横串にする、比較的新しい領域の医師は、どちらかというと大規模病院に偏在しており、本来最も必要とされる本院のような中小規模の急性期病院において圧倒的に不足している。コロナ禍で、わが国において感染制御や感染症の専門医がいかに希少であるかが露呈された。地域別定数だけでなく、不足が顕著な分野の医師がどの程度必要かを試算し、計画的に専門医を養成する仕組みをまず立ち上げるべきではなかろうか。その際、個々の学会とはある程度独立して、大局的見地に立つ必要がある。その上で、診療報酬制度の医師配置基準を導入すると、医師の適正配置は促進されるだろう。

島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[診療科偏在][専門医制度][診療報酬制度]

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