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特集:がんサバイバーの晩期心血管毒性の管理

No.5148 (2022年12月24日発行) P.18

向井幹夫 (大阪国際がんセンター成人病ドック科主任部長)

登録日: 2022-12-23

最終更新日: 2022-12-22

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1984年愛媛大学医学部卒。2010年大阪府立成人病センター循環器内科主任部長。17年地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター腫瘍循環器科・成人病ドック科主任部長。本邦初の腫瘍循環器外来を立ち上げ,日本腫瘍循環器学会創設に携わる。日本腫瘍循環器学会理事。

1 がんサバイバーとがんサバイバーシップ
・がん患者の予後が改善する一方で,がんサバイバーが急速に増加している。
・腫瘍循環器学の登場により,がん治療に伴う晩期心血管毒性が注目されるようになった。
・晩期心血管毒性の長期フォローアップにおいて,プライマリケア医の役割が注目されている。

2 がんサバイバーと晩期心血管毒性
・晩期合併症として,二次がんと晩期心血管毒性が重要である。
・晩期心血管毒性は潜在的に進行することが多く,いったん発症すると重篤化し,治療が困難な症例が少なくない。
・がんサバイバーの予後は,がんによる死亡に次いで晩期心血管毒性で死亡する症例が多い。

3 晩期心血管毒性への対応
・心血管毒性の発症を予防する目的で,がん診療全体で健康的なライフスタイルを維持・促進するための情報提供・アドバイスを行う。
・がん治療前・治療直後に心血管毒性リスクチェックを行い,晩期心血管毒性発症リスクの層別化により予防的対応を行う。

4 成人発症がんサバイバーと小児・AYA世代発症がんサバイバー
・成人発症がんサバイバーは,がん治療開始前の時点で生活習慣病を合併する症例が多く,リスク因子を是正することによる心血管毒性の低減効果が示唆されている。
・小児・AYA世代発症がんサバイバーは,強力な化学療法,放射線療法を受けることで晩期合併症として二次がん,内分泌障害,心血管合併症,神経障害(認知障害)を発症することから,予防的対応が重要となる。

5 晩期心血管毒性のマネジメント
・安定期の長期フォローアップには,心血管毒性リスクの程度に合わせたサーベイランスが必要である。
・晩期心血管毒性に対する患者教育や心血管リスク因子への予防的治療は,プライマリケア医が最も期待される領域である。

伝えたいこと…
晩期心血管毒性に対する新たな試み
現時点でのわが国における晩期心血管毒性に対する体制は,心血管リスクの予防・管理そしてモニタリングを長期間行うシステムなど,医療面でのリソースなどが十分とは言えない状態である。しかし,心血管毒性リスクを層別化することで,リスクに合わせた適切な生活指導と医療介入により,晩期心血管毒性の発症を軽減できる可能性が示されている。そこでは,がんサバイバーにとって身近な存在となるプライマリケア医や外来かかりつけ薬剤師が大きな役割を果たすことが期待されている。
現在,小児・AYA世代発症がん症例に対する長期サーベイランスシステムや二次がんの早期発見,晩期心血管毒性も含めた全身のチェックを行う「がんサバイバードック」の開発など,がんサバイバーを対象とする新たながんサバイバーシップの確立をめざした試みが始まっている1)

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