眼瞼は前葉と後葉にわかれる。前葉には,皮膚,眼輪筋,睫毛,睫毛に付属する脂腺であるZeis腺とアポクリン腺であるMoll腺などがある。後葉には,瞼板とその中に存在するマイボーム腺,瞼結膜などがある。これらの組織から様々な腫瘍が発生する。眼瞼腫瘍の約7割は良性で,3割は悪性である。頻度の高い眼瞼腫瘍を把握しておくことは有意義である。
頻度の高い眼瞼良性腫瘍は,脂漏性角化症と母斑細胞母斑である1)。頻度の高い眼瞼悪性腫瘍は,基底細胞癌と脂腺癌であり,両者で眼瞼悪性腫瘍全体の70%以上を占める1)。また,基底細胞癌と脂腺癌は70歳以上の高齢者に多い1)。
母斑細胞母斑は,茶褐色の半球状の表面平滑な腫瘍で,眼瞼では眼瞼縁に発生することが多い。
脂漏性角化症は,中年以降に発生し,表面に凹凸のある褐色の隆起性結節である。表皮は肥厚し,過角化を起こしているため,硬い,ザラザラした外観を呈する。
基底細胞癌は,当初は結節状に増大するが,徐々に中央が陥凹し潰瘍をつくるようになる。色は黒〜黒褐色である。下眼瞼に発生することが多く,上眼瞼での発生は少ない。
脂腺癌は,眼瞼ではマイボーム腺あるいはZeis腺由来の悪性腫瘍であるが,ほとんどがマイボーム腺由来であると考えられている。黄白色で結節状を呈することが多いが,時にびまん性に広がる症例もある。脂腺癌は霰粒腫や眼瞼炎と誤診されることがある。
切除治療が基本である。再建術式は,腫瘍の大きさや深さによって様々である。その際,眼瞼前葉の再建と後葉の再建(硬性再建)にわけて考える。眼瞼腫瘍の手術で大切なことは,整容面だけでなく,眼瞼の機能,すなわち,開瞼と閉瞼,眼球の保護,眼球運動などの機能を維持することである。角膜上皮障害,兎眼,眼球運動障害などの合併症に注意する。早期発見・早期治療が整容的にも予後という観点においても優れている。
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