本質的に先天的な隅角形成異常のため,出生時ないし若年期に強い房水流出抵抗が生じ,眼圧が上昇し,放置すれば視神経かつ/または前眼部に不可逆的な障害をもたらし,著しい視覚障害に至る疾患である。
4歳未満に発症する原発先天緑内障では羞明,流涙,黒目の増大(角膜径拡大による),角膜混濁等をきたす。4歳以降に発症する若年開放隅角緑内障では自覚症状が乏しく,進行期に,就学時健診などで片眼の視力不良等で見つかる。先天全身疾患に関連した緑内障では,全身疾患(ダウン症,神経線維腫症,Sturge-Weber症候群等)に随伴する症状を呈する。
21mmHg以上の高眼圧。
原発先天緑内障では,角膜径増大(新生児で11mm以上,1歳未満で12mm以上,すべての年齢で13mm以上),細隙灯顕微鏡検査上,角膜混濁,Haab線条,深い前房深度を認める。先天眼形成異常に関連した緑内障では,これに加え,後部胎生環などの虹彩・隅角形成異常(Axenfeld-Rieger異常),無虹彩(無虹彩症),小角膜,水晶体偏位などを認める。神経線維腫症では虹彩結節(Lisch結節)や皮膚のカフェオレ斑,Sturge-Weber症候群では顔面や眼瞼のポートワイン状血管腫,結膜血管怒張や血管腫,脈絡膜血管腫などを認める。眼軸長測定で眼軸長の増大を認める。若年開放隅角緑内障では,成人の緑内障と同様の視神経乳頭陥凹拡大と視野欠損を呈する。
4歳未満で発症する小児緑内障と4歳以上で発症する小児緑内障では,対応が大きく異なる。前者では隅角形成異常が高度なため,薬物加療は無効であり,手術が第一選択となる。手術としては,線維柱帯切開術を第一選択とする。角膜混濁が強い際は眼外法を選択する。角膜混濁が軽ければ眼内法を選択することは可能だが,乳幼児ではシュレム管に対応した線維柱帯の同定や切開が困難なことが多い。後者では年齢が上がるにつれ,成人と同様に眼圧下降点眼薬治療を開始する。点眼はプロスタノイド受容体関連薬が第一選択である。
注意:小児緑内障では眼圧下降に加えて,視機能発達阻害因子を取り除き,屈折矯正,健眼遮蔽,眼位矯正等も適切に行い,弱視予防と治療にも留意する。
禁忌:成人で点眼の第二選択薬として使用されるアイファガンⓇ(ブリモニジン酒石酸塩)は,小児では中枢神経作用を誘発しやすいため慎重に投与する。特に2歳以下では傾眠等重篤な副作用をきたすため,禁忌である。
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