節外性T/NK細胞リンパ腫(extranodal NK/T-cell lymphoma:ENKL)はリンパ腫の一病型であり,全体の約7割が鼻腔およびその周囲に限局性の病変を有する。診断時の年齢中央値はおおむね50歳代であり,男性に好発する。病理学的には血管壁の破壊と広範な壊死,細胞傷害性蛋白の発現,Epstein-Barr virus(EBV)感染を特徴とする。東アジア地域に多くみられ,日本においてはリンパ腫全体の約3%を占める。
広範な壊死のため単回の生検では診断に至らないことも多く,慢性副鼻腔炎などとして経過観察されている患者もめずらしくない。また,皮膚や精巣,骨髄などの鼻腔以外への浸潤が認められることもある。治療方針に大きく影響するため,初発時にはFDG-PET/CT,鼻腔MRI,消化管内視鏡検査,骨髄検査,耳鼻咽喉科や頭頸科による頭頸部領域の診察などの厳格なstagingが勧められる。
リンパ腫の治療に頻用されるCHOP療法(シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)あるいはその類似療法を初回治療として実施した際の5年生存割合は50%以下と不良である。鼻腔周囲原発で病変が頸部リンパ節までにとどまる限局期ENKLに対しては,国内第1/2相試験(JCOG0211-DI)によって開発された放射線治療(RT)・化学療法同時併用療法であるRT-2/3DeVIC療法(デキサメタゾン,エトポシド,イホスファミド,カルボプラチン)が安全性,有効性の面から推奨され1),5年無増悪生存割合63%, 5年全生存割合70%と一部の患者では治癒が期待できる2)。
初発進行期・初回再発および治療抵抗性ENKLに対しては,わが国を含む東アジアの臨床試験で開発されたSMILE療法(デキサメタゾン,メトトレキサート,イホスファミド,L-アスパラギナーゼ,エトポシド)が推奨される3)。ただし,これらの患者に化学療法のみで長期に奏効が持続する可能性は高くないため,治療奏効後に患者の年齢や全身状態を考慮した上で,治癒をめざした自家または同種造血幹細胞移植の実施が検討される。
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