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原発性骨髄線維症[私の治療]

No.5153 (2023年01月28日発行) P.51

竹中克斗 (愛媛大学大学院医学系研究科血液・免疫・感染症内科学教授)

登録日: 2023-01-29

最終更新日: 2023-01-24

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  • 造血幹細胞レベルで生じた腫瘍化により,異常クローン由来の巨核球や単球などから産生される増殖因子・サイトカインによって骨髄の広範な線維化が生じ,血管新生および骨硬化,髄外造血による巨脾がみられる疾患である。全身倦怠感や活動性の低下,呼吸困難,体重減少,夜間盗汗,微熱などの全身症状,脾腫に伴う腹部膨満感や圧迫症状,血球減少に伴う症状がみられる。検査所見では,血球減少,末梢血に涙滴状赤血球の出現,白赤芽球症,LDH高値などがみられる。生存期間の中央値は5.9年と予後不良で,主な死因は,感染症,急性白血病への移行,出血である。

    ▶診断のポイント

    WHO分類改訂版20171)に準じて診断するが,診断には骨髄生検が必要である。線維化を認めない前線維化期と線維化期にわけられる。ドライバー遺伝子変異として,JAK2V617F変異,CALR変異,MPL変異を,それぞれ50~60%,20~30%,約5%に認める。診断後は治療方針決定のため,予後予測スコアリングシステム(IPSS,DIPSS,DIPSS plus)による予後予測,臨床症状のスコアリングを行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    根治的治療は同種造血幹細胞移植のみであるが,発症年齢から,その適応は限られる。同種造血幹細胞移植以外の治療は,貧血および脾腫に伴う腹部症状の改善が目的である。臨床経過は,症例間によるばらつきが大きいので,予後予測モデルを用いて,個々の症例のリスクを評価し,患者と十分に相談しながら治療方針を決定する2)3)

    低リスクおよび中間-Ⅰリスクでは,症状に乏しい症例や臨床所見のない症例 (Hb<10g/dL,脾腫>10cm,白血球数>2万5000/μL,血小板数>100万/μL)は,支持療法のみでも長期の生存が期待できるため,経過観察を行う。ただし,貧血や脾腫による症状を呈する場合は,それぞれに対して治療を行う。貧血に対しては,赤血球輸血や蛋白同化ステロイド療法を行う。脾腫に伴う症状に対しては,ヒドロキシウレア,JAK2阻害薬のルキソリチニブ,摘脾,脾臓への放射線照射を検討する。また,脾腫に加えて全身症状を有する場合も,ルキソリチニブが有効である。ルキソリチニブは生命予後の改善も期待できる報告がある。

    中間-Ⅱリスクおよび高リスクでは,可能であれば同種造血幹細胞移植を行う。中間-Ⅱリスク群,高リスク群に該当し,適切なドナーが存在する場合には,診断後早期の同種造血幹細胞移植を念頭に治療にあたる。移植適応がない場合は,症状に応じた治療の選択,あるいはJAK2阻害薬,新規治療の臨床試験への参加を検討する。

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