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特集:息苦しい(呼吸困難)をどう診るか

No.5153 (2023年01月28日発行) P.26

鋪野紀好 (千葉大学大学院医学研究院地域医療教育学特任准教授/千葉大学医学部附属病院総合診療科)

登録日: 2023-01-27

最終更新日: 2023-01-26

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2008年千葉大学医学部卒業。総合内科専門医,プライマリ・ケア認定医,病院総合診療認定医。米国内科学会上級会員(FACP)。著書に『内科初診外来 ただいま診断中!』(中外医学社)他。

1 プライマリ・ケアにおける呼吸困難とは?
・呼吸困難とは,“呼吸が不快である”,“息がしづらい”,といった自覚症状であり,プライマリ・ケア外来においてしばしば遭遇する主訴である。
・高齢者では,呼吸困難の割合が増える。
・呼吸困難には,低酸素血症により呼吸不全を呈する客観的なものもあれば,低酸素血症を伴わない主観的なものもある。呼吸困難の診療では,これらを明確に切りわけてアプローチをすることが重要である。
・呼吸困難でプライマリ・ケアを受診する患者の原因疾患としては,呼吸器疾患と循環器疾患で約85%を占める。その中でも急性上気道炎が最も多い。

2 呼吸困難の診断
(1)急性呼吸困難の原因疾患
・心不全が最多であり,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪/気管支喘息発作,呼吸器感染症,肺血栓塞栓症,急性冠症候群と続く。
(2)急性呼吸困難から心不全を診断するために
・病歴と身体所見に精通する必要がある。急性呼吸困難の中から単独で心不全を抽出できる病歴や身体所見はないが,いくつかを組み合わせることで診断精度の向上が見込める。
(3)急性呼吸困難から肺血栓塞栓症を診断するために
・特異度が比較的高い,心雑音,頸静脈圧上昇,喘鳴,下腿浮腫等の所見に注目する。
(4)慢性呼吸困難の原因疾患
・鑑別疾患は,呼吸器系,循環器系,筋骨格系(呼吸筋を含む),血液系(貧血等),心因性疾患,ディコンディショニングなどに分類される。

3 身体診察を適切に実施するために
(1)診断に役立つ病歴
・症状の時間経過(タイムフレーム)に着目する。また,症状に応じて注目すべきポイントを押さえる。
(2)診断に役立つ身体診察
・「バイタルサイン」「head to toeでの身体診察」などにおいて,注目すべきポイントを押さえる。

4 POCUSの有用性
・POCUS(point-of-care ultrasound)はそれなりに高い検者間一致率をもって実施できる検査手技であり,プライマリ・ケアの現場でも積極的に活用すべきである。
・心不全,肺炎,肺血栓塞栓症,胸水貯留,気胸などでよく用いられる。

5 Long-COVIDによる呼吸困難
・新型コロナウイルス感染症診断後,28日以上症状が持続している事例を“Long-COVID”と呼ぶ。
・症状は,多種多様である。肺の器質的変化がないにもかかわらず自覚症状が残存している事例に対し,確立された治療法はまだない。

伝えたいこと…
本稿を通して,呼吸困難に対する全般的な診断のためのアプローチを示した。それぞれの有病率を理解し,特徴的な症状を確認することが診断への近道である。近年注目されているPOCUSも簡易的で非侵襲的な検査であるため,プライマリ・ケアでは修得したいものである。これらをうまく組み合わせることで,プライマリ・ケアでも適切な診断に至ることができるだろう。

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