拘束型心筋症とは,左室の拡大がなく,左室壁の肥厚も認めず,左室駆出率の低下も認めないが,左室壁のstiffnessが増高し,左室充満圧が上昇するため,左房拡大を認める疾患である。
特発性と二次性にわけられるが,特発性は頻度が低い。一部の患者ではサルコメア構成蛋白や細胞骨格遺伝子の異常が指摘されている。二次性の原因としてアミロイドーシス,ファブリー病,放射線照射,抗癌剤などがある。
労作時息切れや易疲労感など,一般的な心不全症状を呈する。本疾患に特異的な症状はない。
心電図や胸部X線に,本疾患に特異的所見はない。
心エコーでは,左室拡大や左室壁厚の増大はなく,左室駆出率低下も認めない。左房の拡大を認め,左室拡張機能障害〔拡張早期僧帽弁輪速度(e’)の低下〕,左房圧上昇(左室流入血流速波形は偽正常化~拘束型波形,拡張早期左室流入血流速度(E)/e’比の上昇)を示す所見を呈する。病状が進行すると,二次性肺高血圧を認める。
MRIにおいては,特発性では線維化を反映した左室壁遅延造影像を認めることもあるが,本疾患に特徴的なパターンはない。二次性の場合は,遅延造影像,T1 mapping,T2 mappingで各疾患に応じた特徴的な所見を認める。
心筋生検においては,特発性では間質の線維化,心筋細胞肥大や配列異常などがみられるが,本疾患に特徴的な所見はない。二次性では,各疾患に応じた特徴的な所見を認める。
収縮性心膜炎との鑑別を念頭に置き,診断する必要がある。
特発性の場合は,エビデンスに基づく有効な治療法は確立しておらず,血行動態に対する介入が主となる。二次性の場合は,各疾患に特異的な治療を行う。
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