骨盤骨折には,骨盤輪の断裂を伴わないものと伴うもの(骨盤輪骨折)とがある。前者には筋付着部の裂離骨折,腸骨翼骨折,仙骨横骨折などがある。後者は大きい外力が加わって発生し,多発外傷に伴いやすく,大量出血による出血性ショックを伴うことも少なくない。発生機序は前後方向,側方,垂直剪断,もしくは側方+垂直剪断外力によって生じる。
骨盤輪の断裂の有無と部位をX線骨盤前後,inlet,outlet撮影およびCT像にて診断する。診断にはYoung-Burgess分類が有用である。また,大量出血を伴うことが少なくないため循環動態の評価は不可欠で,神経損傷の有無を評価することも重要である。
骨盤輪の断裂を伴わない骨折では,疼痛が軽減するまで床上安静(1~2週)の後,徐々に荷重歩行を行う。
骨盤輪骨折初期では出血のコントロールと骨盤輪の安定性獲得が重要である。出血対策としては,十分な輸液,輸血以外にシーツラッピング,骨盤ベルト,創外固定や動脈塞栓術が用いられる。シーツラッピング,骨盤ベルトともに骨盤輪を締めることにより出血抑制効果がある。創外固定は骨折部を整復固定することにより骨折部からの出血を抑制し,骨盤輪を安定させる。動脈性出血には塞栓術を行う。しかし,出血の多くは静脈由来であり,血行動態が安定しないときには,小骨盤腔内にガーゼパッキングを行う。その際には,創外固定により骨盤を安定させておくことが重要である。
骨盤輪骨折では早期離床を図り,変形のない安定した骨盤輪を再建する必要がある。固定法は,受傷機転と損傷部位により選択する。
前後方向の圧迫により生じる恥骨結合離開は,転位が大きい場合には創外固定かプレート固定を行う。側方からの圧迫によるものは,多くの場合,骨盤後方部分がかみこんで安定しており,通常固定を必要としないが,回旋不安定性がある場合にはプレートとスクリューによる固定を行う。垂直剪断による骨折は不安定で,骨盤前方のみの固定では十分な固定性を得ることはできないため,骨盤後方部の内固定を行う。
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