四肢外傷は受傷機転や部位によって様々だが,本稿では四肢長管骨骨折への対応について述べる。
どの程度の負荷が損傷四肢に加わったかがポイントである。高エネルギー外傷であればもちろん,低エネルギー外傷と思われても,肥満患者や高齢者,基礎疾患のある患者の転倒は注意を要する。また,重量物による圧挫,長時間の圧迫,受傷機転が不明だが痛みの訴えが強い症例などは,コンパートメント症候群やクラッシュ症候群が疑われるため,要注意である。
まずは頭頸部・体幹の外傷などを見逃さないようにする。意識,血圧,心拍数,呼吸数,体温をチェックし,呼吸状態,循環動態が安定しているかどうか,頭頸部・体幹の創や腫脹,圧痛の有無を確認してから四肢の状態を診察する。四肢は視診上の腫脹,変形,創部の位置・サイズ,活動性出血の有無,汚染の状態を確認する。骨折部の変形や関節脱臼の疑いがないか診察した後,四肢末梢の色調,知覚をチェックし,上肢・下肢の他動時痛の有無を確認する。
単純X線撮影が一般的だが,関節内に損傷が及ぶ場合はCT撮影の適応になる。
関節脱臼や靱帯損傷はMRIが必要になるが,シークエンスの選択が必要になるため,通常,待機的に撮影する。ただし,診断が困難な骨折の早期診断をMRIで行うこともある。
一手目 :〈創部に活動性出血がある場合〉ガーゼと包帯による圧迫と患肢の挙上による止血を試みる
止血が困難な場合は空気止血帯の使用を考慮する。ただし,2時間以上の駆血は禁忌である。
二手目 :〈創部の汚染が顕著な場合〉鎮痛薬,局所麻酔などを使用の上,生理食塩水を用いて創部の粗大な汚染を洗浄する
初期治療室で細部まで創部を洗浄する必要はない。洗浄した後は創部が乾燥しないようにwet dressingを行う1)。
三手目 :〈全身状態が安定しており,かつ侵襲が好ましくない重症頭部外傷などが否定できた場合〉鎮痛薬(鎮静薬)を投与した上で骨折・関節脱臼の整復を行う
自信がなければ専門医にコンサルテーションを行う。整復位を保持した上で,損傷部の近位,遠位の2関節にわたって副子(シーネなど)固定を行う。整復ができなくても患部を固定すれば疼痛の軽減や二次的な損傷の防止に役立つ。
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