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新型コロナ後遺症×(柴胡桂枝乾姜湯+当帰芍薬散)[漢方スッキリ方程式(71)]

No.5155 (2023年02月11日発行) P.14

平畑光一 (ヒラハタクリニック院長)

登録日: 2023-02-08

最終更新日: 2023-02-08

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「元気そう」と安易に考えない

倦怠感はCOVID-19後遺症の最も重要な症状である。就業の障壁となることはもちろん,重篤となれば,入浴できない,咀嚼で疲労する,といった症状を呈し,生活上重大な障害となる。留意しなければならないことは,見た目や一般的な検査では異常が見られないため,つい症状のつらさを軽視してしまいがちなことである。特に,患者が診察室を訪れることができるのは,何日もかけて体調を整えた時であることも少なくなく,その時の状態を見て「元気そう」などと安易に考えることは厳に慎まなければならない。

厚労省の手引き1)に「特に労作後の症状悪化(Post-exertional symptom exacerbation;PESE)がみられる場合には,運動療法の実施は避け,活動量や環境の調整を注意深く実施することに加え,症状に対するセルフマネジメントについての指導を行うことが推奨されている」と明記されている通り,疲れることを避けてもらうことが非常に重要となる。

随証治療が望ましい疾患

COVID-19後遺症では,胸脇苦満(季肋部の圧痛・押したときの不快感)を認めることが多く,柴胡桂枝乾姜湯柴胡桂枝湯などの柴胡剤をうまく使うことで症状の改善を見ることが多い。また,水滞を伴う瘀血所見(典型的には臍左右や下部の圧痛,舌下静脈怒張など)を認めることも多いため,当帰芍薬散加味逍遙散などの駆瘀血剤も利用するとよいことが多い。

冷えや倦怠感が見られるからといって,陽証の患者に十全大補湯人参養栄湯などの補剤を用いると,症状が治らないばかりか,発熱がひどくなったりすることも多いため,注意を要する。

同時多発的に様々な症状が起きることから,症状だけから機械的に処方するより,証に応じて処方する随証治療が望ましい疾患と言える。ひとまず舌のむくみ,胸脇苦満,瘀血所見,冷えだけ分かるようになれば,かなり精度の高い治療ができると思われる。

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