機能性発声障害は,発声時に呼気と連動した喉頭調節が適切になされないために,発声・発語や歌唱が不良となる音声障害である。
本疾患の診断には,喉頭の組織異常や炎症性疾患,音声に影響する全身性疾患や呼吸器・消化器疾患,心理的疾患・精神疾患,あるいは神経疾患を除外する必要がある。したがって,問診や喉頭内視鏡検査に加え,必要に応じて他診療科とも連携して別の原因を除外した後に確定診断に至る。なお,過緊張性発声障害と見受けられる場合,背景として声帯萎縮や声帯溝症,そして片側声帯の(不全)麻痺などによる発声時の声門閉鎖不全が存在する場合がある。したがって,内視鏡検査に際しては声門上の絞扼所見に眼を奪われず,検査時に患者に地声,裏声,ハミングなど様々なタスクを課し,声帯・声門の状態を慎重に観察する必要がある。
さらに,内転型の痙攣性発声障害や音声振戦症の患者で,発声時の喉頭内腔の所見が過緊張性発声障害に類似している場合がある。前者では診断基準での重症度分類に用いられる文章の音読で顕著となる症状が,後者では発声時に声道全体が揺らぐ所見が診断に有用である。また,変声障害は小学校高学年~中学生頃の思春期という,特徴的な年齢で発症することにも注意して診断する。
なお,精神疾患が根底にある心因性発声障害に関しては,本質である精神疾患の治療を専門家にゆだねる必要があり,発声時の喉頭所見だけを根拠に筋緊張性発声障害などと診断せぬよう,慎重な対応・診断が求められる。
前述のように,慎重に機能性発声障害と診断した上で,音声治療(音声リハビリテーション)を施行する。治療の実際は言語聴覚士が行うが,喉頭内視鏡所見や治療効果について,医師と言語聴覚士が情報を共有して密接に連携し,治療に関わる必要がある。なお,アレルギー,後鼻漏,喘息,胃食道逆流症(GERD)といった,音声障害の原因となる,あるいは増悪・予後不良因子となりうる疾患を認める場合,薬物治療も併用するが,疾患の本質へのアプローチは音声治療による。
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