2021年にNEJM誌でランダム化比較試験"SSaSS"が報告され、脳卒中高リスク例における「減Na塩」使用による「脳卒中」減少、そして「心血管系死亡・心筋梗塞・脳卒中」抑制が明らかになった。ではNa負荷により血管はどのような変性をきたしているのか—。そのような観点から興味深い報告が3月30日、EHJ Open誌に掲載された。著者はカロリンスカ研究所(スウェーデン)のJonas Wuopio氏らである。
解析対象となったのは、無作為抽出された50~64歳のスウェーデン住民1万764名である。平均年齢は57.6歳、女性が52.3%を占めた。血圧平均値は124/76mmHgで、高血圧罹患例は30.6%だった。
これらを対象に24時間Na排泄量と動脈変性進展の関係を横断的に調査した。
動脈変性進展の評価には、頸動脈の場合はプラーク「なし」「1つ」「複数」(エコー評価)の3段階、冠動脈も狭窄「なし」「50%未満」「50%以上」(CT評価)の3段階を指標とした。
その結果、「尿中Na排泄1000mg/日」高値に伴う頸動脈プラーク進展オッズ比(OR)は年齢・性別補正後、1.03(95%信頼区間[CI]:1.00-1.06、P=0.028)の有意高値だった。冠動脈狭窄進展も同様だった(OR:1.04、95%CI:1.01-1.07、P=0.02)。
ただしいずれのORも、血圧補正後は1.00(0.98−1.03)と1.01(0.97−1.04)の上昇「傾向」にとどまった。このためWuopio氏らは、Na摂取増加に伴う血圧上昇が動脈変性進展の重要な因子だと考察している。
しかし興味深いことに、高血圧例を除外した3404名を対象とした解析でも、「尿中Na排泄1000mg/日」高値に伴う頸動脈プラーク進展ORは1.07、冠動脈狭窄進展も1.16(いずれもP<0.001)の有意高値だった。
Naには直接的な血管内皮障害/傷害作用が報告されており[Farquhar WB, et al. 2015、Patik JC, et al. 2021]、Wuopio氏らも血管病変は高血圧発症前から進展している可能性、高血圧以外の要因によっても進展する可能性を指摘している。
本研究は主にスウェーデン心肺財団からの資金提供を受けた。