酒皶は,眉間部,鼻部・鼻周囲,頰部,オトガイ部の顔面中央部に皮疹が分布し,脂腺性毛包を主座とする慢性炎症と毛細血管拡張を特徴とする疾患である。
皮疹形状は,紅斑,不規則な毛細血管拡張,痤瘡様の丘疹や膿疱が混在する。鼻瘤では,鼻部の発赤,毛細血管拡張,毛孔開大・脂腺拡張,皮膚硬化・線維化,鼻形態の変形を認める。面皰が存在する場合には,痤瘡を疑う。
主たる症候に基づいて,紅斑・血管拡張型酒皶,丘疹・膿疱型酒皶,瘤腫・鼻瘤型酒皶,眼型酒皶,の4型に分類される。
酒皶は30歳代以降に好発し,紅斑・血管拡張型と丘疹・膿疱型は女性に多く,瘤腫・鼻瘤型は男性に多い傾向がある。寒暖差や日光曝露,運動,摂食などの末梢血流の変動を伴う行為によって,ほてり感や顔面潮紅を自覚することが多い。酒皶はステロイド外用薬で増悪するため,ステロイド外用薬使用中に顔面に丘疹や膿疱が出現した場合には,酒皶の増悪を鑑別する必要がある。
酒皶の治療は,①紅斑・血管拡張型酒皶の脂腺性毛包周囲の炎症による紅斑や器質的変化を伴う毛細血管拡張,②丘疹・膿疱型酒皶の丘疹と膿疱を主体とした炎症性皮疹,③瘤腫・鼻瘤型酒皶の組織線維化を伴う形態変形,④眼型酒皶の結膜症状,のそれぞれの主たる症候に合わせて組み立てる。
紅斑・血管拡張型酒皶:末梢血管の拡張と血流増加を主たる変化とするため,末梢血管の収縮を目標とした治療を行う。カルベジロール内服による紅斑とほてり感の改善,色素レーザーやYAGレーザー,intense pulsed light(IPL)による毛細血管拡張の改善を検討する。顔のほてりに対して,桂枝茯苓丸,清上防風湯,加味逍遙散,当帰芍薬散などの漢方薬が有効なことがある。
丘疹・膿疱型酒皶:脂腺性毛包を中心とした炎症所見を主たる変化とするため,メトロニダゾール外用薬と抗炎症作用のあるテトラサイクリン系抗菌薬内服の併用により,炎症反応の沈静化を図る。
瘤腫・鼻瘤型酒皶:上記の治療に加えて,変形した皮膚形態の外科的治療(瘤腫切除,シェービングによる形態形成)や炭酸ガスレーザー治療を検討する。
眼型酒皶:結膜炎症改善のために抗菌点眼薬とステロイド点眼薬の併用を行う。
酒皶患者に,空気曝露性皮膚炎・花粉皮膚炎や接触皮膚炎が合併していることは稀ではない1)。併存皮膚疾患に対する対策として,特異的IgE検査やパッチテストを行い,抗ヒスタミン薬の内服や接触源の回避を指導する。
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