1 心不全の適切な治療
心不全の適切な治療においては,①ガイドラインに準じた治療,②導入しやすいものから加える(足し算),③副作用を考慮して減らす(引き算),を考える。利尿薬は,ループ利尿薬,サイアザイド系利尿薬,スピロノラクトン,バソプレシンV2-受容体拮抗薬を組み合わせる。
超高齢者の心房細動への抗凝固療法においては,出血すると止まりにくくなる副作用があるため,転倒などを回避しながら治療を継続することが課題である。
2 チーム医療
病院と違い,在宅では職種間での疾患に対する知識の差が,患者のとらえ方に相違を生じさせる。
より早期に心不全増悪を発見するために,①心不全増悪時における症状の出かた,②至適体重の設定,③至適BNP/NT-proBNP値は,非専門で構成されるチームにとって簡便な指標となる。また,地域での非専門の医療介護職のスタッフは,循環器疾患に対して不安を抱いている。高齢心不全患者の多くは併存疾患も多く,心不全以外の再入院も多い。これからの心不全の在宅管理においては,遠隔医療のさらなる社会実装が望まれる。
3 家族ケア
在宅医療においては,介護負担の増大が在宅療養の切れ目でもある。患者だけではなく介護者にも同様に目を向ける必要がある。介護負担を軽減するためには,多施設・多職種間で情報共有を行いながら,①患者の症状緩和,②介護者自身の問題解決,③傾聴,④マンパワーの強化,⑤予後通知,⑥レスパイトの検討,⑦介護負担スコアの活用,が重要である。
4 意思決定支援
意思決定支援には,十分な情報を得て,個人の価値観に一致した決定をすることである。このため,わかりやすい情報の提示が重要である。患者にとって最善のケアは何かを大切にし,家族や関わる医療介護職によって,人生の物語を考えながら合意形成に至る過程を大切にして,ぎりぎりまで調整する努力を行う。
5 症状緩和
心不全患者は様々な症状を呈する。最も一般的な呼吸困難感に対しては,①質と量,②治療可能な原因の存在,③低酸素状態である呼吸不全,④不安,に留意する。
また呼吸困難感に対する非薬物療法と薬物療法を考慮し,その上で症状緩和が困難な場合は鎮静を考える。あらゆる積極的な治療の選択肢を検討した上で,①苦痛の抵抗性,②生命予後,③患者の希望,を考えて鎮静手段を検討する。