がんの診断を受けて1年以内の患者が自殺や不慮の事故等で死亡するリスクは、がんになっていない者の約20倍に上ることが22日、国立がん研究センターや国立精神・神経医療研究センター等の共同研究で示された。
40~69歳の男女約13万人を1990~2010年に追跡した結果を基に、がんの診断と自殺等のリスクとの関連を検討した。
それによると、解析対象となった約10万3000人のうち、追跡期間中にがんの診断を受けた群(1万1187人)では1年以内に13人が自殺、16人が不慮の事故等その他の外因により亡くなった。診断から1年目以降の自殺は21人、その他の外因死は32人だった。
一方、がんになっていない群では527人が自殺、707人がその他の外因死により亡くなった。
解析の結果、がんになっていない群の自殺および他の外因死のリスクに比べ、がんの診断を受けた群の1年以内のリスクは共に約20倍に上った。診断後1年以上経過した自殺および他の外因死のリスクは、がんになっていない群と違いがみられなかった。
研究チームは、「がんと診断されることによる心理的ストレス・抑鬱は診断後1カ月から数カ月以内で最も強い」と指摘。また、診断後1年以内は、がんの発生や治療に伴うライフスタイルの変化が大きく、認知・身体・社会的機能の低下も自殺や事故のリスクが高い要因と考えられるとしている。
その上で、がん患者のケアに関わる医療従事者や家族に対し、特に診断後1年以内は(1)自殺を含めたさまざまな外因死のリスクに留意する必要がある、(2)診断やがん罹患・治療による機能低下のアセスメントが重要である─として注意を呼びかけている。