肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)は,左心系疾患や呼吸器疾患など肺高血圧症に至る併存症がなく,主な病変部位が肺動脈である肺高血圧症群である。特発性または家族性PAH,および膠原病,先天性心疾患,門脈圧亢進症,HIVに関連するPAHなどが含まれる。
PAHの診断は,安静臥位の右心カテーテル検査にて「平均肺動脈圧が20mmHg以上,肺動脈楔入圧が15mmHg以下,肺血管抵抗が3Wood units以上」と定義される。診断には,左心系疾患または呼吸器疾患による肺高血圧症,慢性血栓塞栓性肺高血圧症などを鑑別する必要がある。適切な診断のためには,「肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)」およびWHO機能分類に応じた治療薬効果のエビデンス(2022 ESC/ERS Guidelines)を参照されたい。
治療は,2022 ESC/ERS Guidelinesに応じて行う。
選択的肺血管拡張薬には,プロスタサイクリン経路,エンドセリン経路,一酸化窒素経路をターゲットにする3系統の薬剤がある。選択的肺血管拡張薬は,単剤で十分な治療効果が得られない場合,薬効の異なる薬剤を追加し多剤併用療法を行う。重症例では同時多剤併用療法も考慮する。
利尿薬,酸素療法,肺移植が挙げられる。
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