成人期に発見される先天性心疾患では最も多い疾患である。不整脈や心不全を契機に心エコー図で診断されることが多い。高齢者で発見されることもある。加齢とともに心房細動,房室弁逆流,肺高血圧の頻度が高まり,比較的小さな欠損症でも奇異性脳塞栓を起こす危険性がある。多くの心房中隔欠損症はカテーテル治療が可能であり,日常運動能の改善と長期予後の改善が期待される。
特異的な自覚症状を伴うことは少なく,心雑音を主とする臨床所見にも乏しいことが多い。胸部X線で心拡大がみられたときには,本疾患を念頭に置く必要がある。
成人期に新規に発見される心房中隔欠損症は60歳にピークがあり,多くは動悸・息切れなどの症状が進行して発見される。中には心房性不整脈,脳梗塞,心不全を発症して,原因検索の過程で発見される場合もある。
高齢者になって発見される心房中隔欠損症の中には,形態的にもともと卵円孔開存であったものが,心房細動などの影響で心房が進展され欠損孔に進行したものがある。
臥位では正常な酸素飽和度であるにもかかわらず坐位をとると著明な低下をきたすplatypnea orthodeoxia症候群は,下大静脈血が心房中隔欠損孔を通過し直接左心房に流入することが主因である。欠損孔をカテーテル閉鎖することで,症状は劇的に改善する。
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