壊疽性膿皮症は,好中球性皮膚症の代表的な疾患である。臨床的に,潰瘍型,膿疱型,水疱型,増殖型,ストーマ周囲型,の5型に分類されることが多い。潰瘍型が圧倒的に多く,下腿に好発し,壊疽性,増殖性の深い穿掘性潰瘍病変が単発または多発する。
初発疹は無菌性の小膿疱・小水疱・小丘疹で,急速に潰瘍化し,遠心性に拡大する。臨床的に,潰瘍の辺縁は青白く見える数mm幅の帯状を呈し,堤防状にわずかに隆起する。さらにその周辺には浮腫を伴う。また,潰瘍底は乳頭状に増殖する。病理組織像は,真皮内に好中球の浸潤に加え単核球浸潤を認めるが非特異的な慢性炎症像で,血管炎の所見を欠く。炎症性腸疾患,血液疾患,関節リウマチ,大動脈炎症候群などの基礎疾患や,pathergy(些細な外傷,外的刺激を契機に壊疽性膿皮症が誘発される現象)がみられると,診断の参考になる。免疫抑制薬によく反応するが,治癒後に篩状または皺状の瘢痕を残す。さらに,他の原因による潰瘍が否定されることが重要で,特に下腿に潰瘍をきたす循環(血行)障害,血管炎,血栓症,感染症,悪性腫瘍,などとの鑑別が必要となる。
表在型や,浅い潰瘍・小型の潰瘍病変に対しては,まず外用薬(副腎皮質ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏)による局所療法のみで反応をみることもある。しかし通常は,副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン0.5~1mg/kg)の全身投与を主体に,シクロスポリン(3~5mg/kg),生物学的製剤の使用を組み合わせて治療戦略を立てる。さらに,十分な効果が得られない深い潰瘍に対しては,メチルプレドニゾロンパルス療法も考慮する。代替療法として,免疫抑制薬(アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチルなど),ジアフェニルスルホン(dapsone),コルヒチン,ミノサイクリンなどが使われる。
顆粒球単球吸着除去療法は,妊婦や血液疾患合併例などに考慮される。
手術療法は,活動性がおさまった後,潰瘍面積が大きい場合に用いられることがある。プレドニゾロン量が10mg/日程度まで減量した時点で,メッシュ分層植皮術を行う。閉鎖陰圧療法が併用されることもある。
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