【質問者】稲本賢弘 国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科
【非細胞傷害性の新規抗腫瘍薬を同種移植の前後に適切に組み込む】
同種移植は血液悪性疾患に対する根治的治療です。これまで大きな問題であった移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD),感染症,生着不全などの合併症への対策が整備されてきたのに対し,移植後再発については大きな改善がみられていないのが実情であり,再発をなくすための新しい治療戦略の構築が喫緊の課題となっています。
「移植までしたのに,どうして再発するのか?」という切実な問いに対して,最近の基礎的研究からいくつかの免疫逃避機序が提唱されています。この中には,IL-15やIFN-gといった炎症性サイトカインの低下,免疫チェックポイント分子の発現上昇,腫瘍細胞側のHLAクラス2の発現低下などが含まれ,こうした知見に基づいた新治療も臨床試験で進められています。様々な移植後再発機序に立脚した強力な治療法の確立が期待されますが,選択的・局所的に必要十分なGVL効果を発動させることは容易ではなく,実際的には全身の免疫環境の向炎症状態への再賦活化を伴うため,高齢者や合併症を有する患者にとって,必ずしも「再発を“安全に”減らす」治療にはならないかもしれません。
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