心筋梗塞(MI)の救命率は向上したが、救命後の心不全(HF)発症、そしてそれに伴う死亡リスクの増加はいまだに問題である[Bahit MC, et al. 2018]。
一方、MI発症後「慢性期」についてだが、2型糖尿病(DM)例に対するSGLT2阻害薬の「心血管系(CV)死亡・HF入院」抑制作用がランダム化比較試験"DECLARE-TIMI 58"の事前設定追加解析から報告されている。
そこで2型DM例におけるMI発症後「亜急性期」からのSGLT2阻害薬開始の有用性を検討したところ、「死亡・HF入院」リスク減少の可能性が示唆された。Journal of the American Heart Association誌7月8日掲載の、韓国・カトリック大学校のOsung Kwon氏らによる観察研究を紹介したい。
同氏らが解析対象としたのは、初発MIへのPCI成功から2週間以内の2型DM 2万8671例である。韓国公的保険データベースから抽出した。
これらをMI発症後にSGLT2阻害薬を開始した983例としなかった2万7573例に分け、傾向スコアでマッチさせたSGLT2阻害薬「開始」群(938例)と「非開始」群(1876例)の間で、「総死亡・HF入院」リスクを比較した。
平均年齢は57.2歳、80%が男性だった。
心保護薬はβ遮断薬を約8割が、またレニン・アンジオテンシン系阻害薬をおよそ7割が服用していた(群間に有意差なし)。
一方、血糖降下薬は、SGLT2阻害薬「開始」群でSU剤服用例が有意に多く(32.7% vs. 23.9%)、逆にDPP-4阻害薬は「開始」群で有意に少なかった(25.4% vs. 35.0%)。
その結果、2年間追跡時点の「総死亡・HF入院」発生率はSGLT2阻害薬「開始」群が9.8%、「非開始」群が13.9%となり、「開始」群における補正後ハザード比(HR)は0.68(95%信頼区間[CI]:0.54-0.87)の有意低値だった。
「総死亡」「HF入院」を個別に比較しても、「開始」群における有意な減少が認められた。
一方、非致死性の「心筋梗塞」「脳梗塞」リスクは「開始」群と「非開始」群間に有意差はなかった。
Kwon氏らはSGLT2阻害薬「開始」群における「死亡・HF入院」減少の機序を「血行動態改善」と考えているようである。
なお急性MI亜急性期からのSGLT2阻害薬開始によるCV転帰改善作用は、現在2つのランダム化比較試験"DAPA-MI"(本来なら本年6月終了予定)と"EMPACT-MI"(本年8月末終了予定)で検討中である。
本研究はThe Research Institute of Medical Sciencesとカトリック大学校から資金提供を受けた。