感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)は,弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌が集簇した疣腫を形成する全身性敗血症性疾患である。乱流を伴う短絡血流を認める循環器疾患はIEのリスクとなり,小児においては先天性心疾患で頻度が高い。
発熱,悪寒,倦怠感,易疲労感,体重減少など非特異的な症状が多く,心雑音の出現あるいは性状の変化や,不整脈,心不全徴候が認められることもある。IEを疑って血液培養を採取する場合は,原則として3セット以上の採取が推奨されており,適切に採取された場合の陽性率は90~100%とされている。診断には心エコー検査が有用で,疣腫の部位,大きさや形態のほか,弁の損傷や逆流の程度,心囊液貯留などを評価する。
全身状態が安定している場合は,抗菌薬投与よりも起炎菌の同定を優先する場合がある。起炎菌が同定されたら,感受性検査の結果に基づき,さらに人工弁の感染かどうかや腎機能障害の有無も考慮し,抗菌薬を選択する。抗菌薬治療は最低でも4週間,多くは6~8週間継続する。
IEにおける心臓手術では,疣腫を含む感染巣の完全な除去と組織の再建(弁形成など)が行われる。手術適応となるのは,①抗菌薬抵抗性の感染,②内科治療でコントロール不能な心不全,③塞栓の予防,である。特に10mm大を超える可動性のある疣腫は,塞栓のリスクが高いとされ,抗菌薬投与後数日以内の早期手術が推奨される。
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