貧血は慢性腎臓病(CKD)に頻発する合併症であり、その頻度は非CKDの2倍と報告されている[Stauffer ME, et al. 2014]。また貧血は、CKD例の心腎転帰増悪危険因子でもある[Palaka E, et al. 2020]。
しかしこのCKD例の貧血に対し、CKD診療の最前線であるプライマリケアでは必ずしも十分なケアが提供されていない可能性があるようだ。スウェーデン・カロリンスカ研究所のYang Xuらが、プライマリケア医受診CKD 4万例以上のデータ解析から明らかにした。Journal of Internal Medicine誌7月18日掲載の論文を紹介したい。同氏らはCKD例における貧血発見と治療の重要性を、広く啓発する必要性を訴えている。
今回の解析対象は、スウェーデンにおける、プライマリケア医で外来加療中の「ステージ3-5」CKD 4万5637例である。すでに貧血を合併していたCKD 1万7212例(CKD全体の27%)は除外されている。なおこの「27%」という合併率は英国における「ステージ3-5」CKDを対象とした横断研究における値(22.2%)に近似している[Dmitrieva O, et al. 2013]。
平均年齢は78歳、CKDステージは78%が「3a」、Hb平均値は13.9g/dLだった。
これら4万5637例の臨床検査値データベースと医療情報データベースを突き合わせ、その後の貧血発症・検査・診断状況を調べた。
中央値2.4年間の観察期間中26%(1万1987例)が新たに、臨床検査値上の「貧血」を呈した(「貧血」相当例)。しかし実際に「貧血」と診断されていたのは、これら「貧血」相当例中15.0%のみだった。
また鉄欠乏/過剰の検査実施率も低かった。
すなわちトランスフェリン飽和度(TSAT)を測定されていたのは「貧血」相当例中の11.0%、フェリチン値測定も27.4%のみだった。
そして「貧血」相当例中、半年以内に貧血治療を開始したのは19.1%のみだった。
なお貧血の39.5%を占める重度貧血例に限っても、プライマリケアにおける診断・検査・治療は必ずしも十分とは言えなかった。
具体的には、貧血相当例のうち「貧血」と診断が下されていたのは67.7%、TSATとフェリチンの測定率もそれぞれ24.2%と49.4%のみだった。
また貧血該当から半年以内の貧血治療開始率も56.8%にとどまっていた。
本研究はAstellas Pharma Incの支援を受けて実施され、論文執筆も同社のサポートを受けた。