わが国では3.9~4.5/10万人年が発症すると推定されるIgA腎症[エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020]に対し、疾患修飾薬となり得る薬剤が登場した。糖質コルチコイド「ブデソニド」の経口製剤である。昨年10月に報告されたランダム化二重盲検比較試験"NefIgArd"の延長観察の結果、明らかになった。Lancet誌で8月14日、米国・スタンフォード大学のRichard Lafayette氏らが報告した。
この経口ブデソニド製剤(Nefecon)は回腸に選択的に作用する。腎症の原因となるIgAの主たる産生部位と考えられている腸管関連リンパ組織(GALT)、特にパイエル板への作用を介した、IgA産生抑制が期待されている[Barratt J, et al. 2020]。
今回、NefIgArd試験の対象となったのは世界20カ国から登録された、顕性蛋白尿が持続し、eGFR 35-90mL/分/1.73m2の18歳以上IgA腎症364例である。
管理不良の糖尿病や高血圧合併例は除外されている。
確診からの期間中央値は2.9年だった。
試験開始時の尿蛋白/クレアチニン比中央値は1.26g/g、推算糸球体濾過率(eGFR)中央値は55.5mL/分/1.73m2だった。
また約8割が、承認最大用量50%以上用量のレニン・アンジオテンシン系阻害薬を服用していた。
これら364例は経口ブデソニド製剤群とプラセボ群にランダム化され9カ月間経過後、試験薬を中止してさらに観察が続けられた(全期間を通し二重盲検)。
その結果、既報のとおり経口ブデソニド群ではプラセボ群に比べ、1次評価項目である9カ月後の尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)が相対的に27%有意に低値となり、この差は試験薬服用中止の3カ月後まで維持された。
今回報告されたのはそのさらに12カ月後、つまり試験薬服用中止から15カ月後までのデータ解析結果である。
その結果、本解析の1次評価項目である「2年間の平均eGFR」は、経口ブデソニド群ではプラセボ群に比べ5.05mL/分/1.73m2の有意高値が保たれていた。
さらに試験薬中止後の期間で比較しても、経口ブデソニド群のeGFR低下幅はプラセボ群よりも3.9mL/分/1.73m2、有意に抑制されていた。
なお両群の尿中クレアチニン排泄量に、差はない。
本試験はNefeconを製造するCalliditas Therapeutics社からの資金提供を受けた。また同社が費用を負担する論文執筆補佐も受けた。