・子どもは,様々な理由により脱水が生じやすい。
・脱水の重症度は,体重ではなく臨床症状で評価する。
・輸液療法は,①輸液製剤,②輸液投与量,③輸液投与速度の3つを決定して行う。
・等張液は,10mL/kgを1単位として,低血圧性ショック,代償性ショック,循環不全徴候なし,の状況に合わせて投与速度を決める。
・以前は低張液である3号液が主流であったが,医原性低ナトリウム血症のリスクを考慮して,等張液を用いる流れになっている。
・Holliday-Segarの輸液計算式で算出された輸液量を,70~80%に減量して使用する。
・軽症~中等症の脱水であれば,経口補水療法(ORT)は経静脈輸液療法と同等の効果がある。
・日本の経口補水液(ORS)はNa濃度が低い低張液であり,飲みやすさの問題も含めて今後の開発が期待される。
子どもの診療をしていると,急性胃腸炎に伴う嘔吐や下痢,また水分摂取不足による脱水は日常的に遭遇する頻度の高い病態であることを実感する。大人に比べ,水代謝が特有である子どもでは,脱水を生じやすい。
子どもに脱水が生じやすいのは,①低年齢ほど体重に占める水分(細胞外液量)の割合が大きい,②乳児では水の代謝回転が成人の約3倍速く,約3倍の水分摂取量(100~120mL/kg/日)が必要で,細胞外液の半分が1日で新しく置き換わる,③感染症に罹患する頻度が高く,下痢や嘔吐といった水分排泄量増加,摂取量減少が起こりやすい,④2~3歳までは腎の濃縮力が未熟であり,水分を喪失しやすい,⑤新生児,乳児では口渇感を伝えられない,つまり水分補給を他人に頼っているため,十分な水分摂取が行われにくい,などの理由による1)。
体重全体は,固形からなる部分と,水からなる部分にわけることができる。水からなる部分を体内総水分量(total body water:TBW)と呼ぶ。TBWの変化を最もよく表すのは体重の変化であり,水分喪失量の割合により脱水症の重症度が決定されるため,体重の減少割合が重要である。