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【文献 pick up】65歳以上で透析導入ならば「腹膜透析」のほうがメリットは大?―台湾大規模観察研究/Sci Rep誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-10-04

最終更新日: 2023-10-04

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65歳以上で新規透析導入となった場合、「腹膜透析」は「血液透析」に比べ「死亡」リスクを増やすことなく「脳心血管系イベント」と「悪性腫瘍」のリスクを有意に抑制する可能性が大規模観察研究の結果、示された。台湾・長庚記念病院のYuKai Peng氏らが9月27日、Scientific Reports誌で報告した。

【対象】

今回の解析対象は、台湾在住で201319年に維持透析が必要となった65歳以上の3万6852例中、傾向スコアでマッチした「腹膜透析」1628例と「血液透析」6512例の計8140例である。慢性腎臓病の診断歴がない例、また悪性腫瘍合併例は除外されている。同国の国民皆保険データベースから抽出した。

平均年齢は74歳、腎障害の基礎疾患は糖尿病性腎症が最多(約50%)で腎硬化症(21%)、糸球体腎炎(20%弱)が続いた。

また40%強に感染症入院の既往があり、心血管系入院既往も30%に認められた。

【方法】

これら「腹膜透析」群と「血液透析」群間で、5年間の「脳心血管系イベント」「悪性腫瘍」「感染症」の発生率とリスクを比較した。

【結果】

「脳心血管系イベント」リスクは「腹膜透析」群で「血液透析」群に比べ、有意に低くなっていた(ハザード比[HR]0.7495%信頼区間[CI]0.66-0.83。発生率は10.1 vs. 13.0%/年)。

「脳心血管系イベントによる死亡」も同様で、「腹膜透析」群におけるHR0.62の有意低値だった(95%CI0.46-0.84)

「悪性腫瘍」も同じく、「腹膜透析」群におけるHR0.55(同:0.40-0.76)と有意に低かった(発生率は1.2 vs. 2.1%/年)。

一方「感染症」は「腹膜透析」群で有意なリスク増が認められた(HR1.2895%CI1.20-1.37。発生率は34.1 vs. 24.1%/年)。

ただし感染症による死亡HR0.93(同:0.81-1.08)と、有意差を認めない。

また「総死亡」リスクにも有意な群間差はなかった。

【考察】

Peng氏らは「腹膜透析」「血液透析」両群間で「脳心血管系イベント」リスクに差があった原因を、「血液透析」実施時の「心筋スタニング多発」「透析時低血圧」「不整脈」「一過性の脳灌流減少」が合わさった複合的なものと考えている。

また「悪性腫瘍」については、韓国からもすでに同様の報告がある点を指摘した上で、血液透析で肝臓癌が増加していた可能性が考えられるとした。

本研究に関するCOIの開示はなかった。

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