2型糖尿病(DM)例がサルコペニアを呈すると心血管系(CV)イベントリスクが約2倍に跳ね上がる可能性が明らかになった。英国・グラスゴー大学のFanny Petermann-Rocha氏らが10月26日、Diabetes、Obesity and Metabolism誌で報告した。
SGLT2阻害薬やGLP-1受容体アゴニストの登場後も2型DM例のCVイベント残余リスクは決して小さくないため、サルコペニアに対する介入がCV転帰をさらに改善する可能性が示唆された。
今回の解析対象となったのは、英国自主参加コホート(UKバイオバンク)に登録された、40歳以上の2型DMの欧州系白人1万1974例である。
これら1万1974例におけるCVイベント(虚血性心疾患、心不全、脳血管障害、その他血管系疾患)発生率を、「サルコペニア」の有無で2群に分け比較した。
「サルコペニア」の有無は「握力」と「筋肉量」「歩行速度」を指標とし、白人用サルコペニア基準であるEWGSOP2基準に従い判定した。
観察開始時の平均年齢は59.8歳、男性が67.8%を占めた(両群間に大きな差なし)。
その結果、10.7年間(中央値)の観察期間中、16.3%がCVイベントを発症した。
「サルコペニア」群の「非サルコペニア」群に対するCVイベントハザード比(HR)は、「嗜好品」や「身体活動性」「2型DM罹患期間」などの諸因子を補正後も1.89(95%信頼区間[CI]:1.61-2.21)の有意高値だった。
特に「心不全」で、サルコペニアに伴うリスク上昇が著明だった。
また傾向スコアを用いてマッチさせた集団で比較しても同様に、「サルコペニア」群におけるCVイベントHRは2.01(95%CI:1.33-3.16)と有意に高かった。
なお「握力」で分けても「弱」(男性<27kg、女性<16kg)ならば諸因子補正後CVイベントHRは1.85(95%CI:1.58-2.17)の有意高値となり、歩行速度「通常以下」でもHRは同様に1.92(95%CI:1.64-2.24)と有意に高くなっていた。
Petermann-Rocha氏らはサルコペニアの有無とCVイベントリスク間の因果関係は不明としながらも、2型DM例のCVイベント抑制にサルコペニア予防が有用である可能性があるとして、筋力増強が有用ではないかと考察していた。2型DM例に対する運動療法の新たな有用性となるだろうか。
UKバイオバンク研究は私企業以外から資金提供を受け、実施されている。