No.5220 (2024年05月11日発行) P.48
野添匡史 (関西医科大学リハビリテーション学部理学療法学科准教授)
野田 匠 (国立循環器病研究センター心血管リハビリテーション科)
前川恵美 (北里大学医学部循環器内科学)
神谷健太郎 (北里大学医療衛生学部教授)
登録日: 2024-05-13
最終更新日: 2024-05-07
【質問者】野添匡史 関西医科大学リハビリテーション学部理学療法学科准教授
【心不全悪液質に関する研究は不十分であり,診断基準と介入の確立が課題】
悪液質(カヘキシア)は,2006年にEvansら欧米のエキスパートによって行われたコンセンサス会議にて,がんや心不全などの背景疾患に関連した複雑な代謝症候群であり筋量低下を特徴とすることが提唱されました1)。さらに,欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)からは,カヘキシアは炎症を伴う慢性疾患関連性の低栄養と同義であると提唱され,疾患のない低栄養や栄養不良とは病態が異なることが示されました2)。
悪液質の評価方法には,Evansらが提唱した基準や体重減少によるものなどがあり,これまでに多くの慢性疾患患者を対象に研究が行われてきました。しかし,“心不全患者の悪液質”に関する研究はいまだ少なく,確立された診断基準はありません。2023年,筆者らの研究チームはFRAGILE- HF研究から,Evansらの包括的なカヘキシア診断基準が高齢心不全患者の予後予測に有用であることを示しました3)。また,アジア・カヘキシア・ワーキンググループ(AWGC)によるアジア人向けカヘキシア診断基準も発表されており4),心不全患者のカヘキシア診断にどの基準を用いるべきか検証が必要です。
残り979文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する