眼位・眼球運動の異常に起因し,対象が2つに見える状態である。単眼視では1つに見え,両眼で見て初めて二重に見えると自覚するものを複視と呼ぶ。単眼視でも2つに見える単眼複視とは区別して扱う。眼位異常は,眼球運動制限のない共同性斜視と眼球運動制限のある麻痺性斜視にわかれ,いずれも複視をきたしうる。
複視の訴えがあれば,まず単眼複視と両眼複視を区別する。以下,両眼複視=複視として扱う。複視は斜視に起因し,斜視は共同性斜視と麻痺性斜視とがある。
麻痺性斜視は,頭蓋内や眼窩内疾患,神経筋接合部疾患などが原因となる。重症かつ緊急の疾患から先に鑑別する。
動眼神経麻痺,外転神経麻痺,視神経障害を伴う眼球運動障害,疼痛を伴う眼球運動障害は要注意であり,特に散瞳を伴う動眼神経麻痺ではMRIを撮るより先に脳神経外科にコンサルトする。それ以外の麻痺性斜視では,MRIで外眼筋腫大や圧迫性病変の有無の確認,sagging eye syndromeや強度近視の長い眼軸に伴う内斜視などを鑑別する。
共同性斜視では斜視の治療やプリズム眼鏡装用で複視の軽減をめざす。
原疾患がある場合はその治療を優先する。
治療可能な疾患がない場合や,原疾患の治療後に眼位が落ちついているときには複視の対応をする。片眼遮蔽やボツリヌス注射は急性期であっても可能な対応である。
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