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アトピー性皮膚炎[私の治療]

No.5205 (2024年01月27日発行) P.44

常深祐一郎 (埼玉医科大学医学部皮膚科教授)

登録日: 2024-01-26

最終更新日: 2024-01-23

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  • 小児から思春期,30歳代くらいまでは有病率が10%前後で推移し,その後徐々に減少しはじめるが,50歳代,60歳代にも一定数存在する。皮膚のバリア機能障害を基盤として外界から種々の刺激が侵入しやすくなることで炎症が起こり,湿疹病変を生じる疾患である。免疫学的に2型炎症が中心となる。

    ▶診断のポイント

    瘙痒のある湿疹病変が身体の左右対称性に生じ,増悪・寛解を繰り返しながら慢性に経過するものをアトピー性皮膚炎と言う。湿疹とは,表皮の炎症で,病理組織学的に海綿状態を呈し,臨床的に紅斑,丘疹,漿液性丘疹,小水疱,びらん,痂皮が混在し,慢性化すると苔癬化をきたすものを言う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療はバリア機能障害と炎症に対するものになる。バリア機能障害に対しては保湿剤を使用する。炎症に対しては抗炎症外用薬を使用する。寛解導入では,抗炎症効果が高く即効性のあるステロイド外用薬が中心となる。寛解維持では,タクロリムス外用薬,デルゴシチニブ外用薬,ジファミラスト外用薬を活用する。これらの薬剤は抗炎症効果や即効性ではステロイドに劣るが,局所副作用がないので長期間使用しやすい。タクロリムス外用薬は分子量が大きいので皮膚が薄く吸収のよい顔面や頸部に特に適する。初期に刺激感があるので一部から開始して徐々に塗布範囲を広げる。デルゴシチニブ外用薬はタクロリムス外用薬より抗炎症効果が低く,ジファミラスト外用薬はさらに低い。いずれも分子量が小さく部位によらず効果がある。また,刺激がないので最初から全範囲に塗布できる。

    ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬は,連日塗布で炎症が十分コントロールできている場合,2日に1回,3日に1回と塗布回数を徐々に減少させ,最小限の塗布回数で寛解を維持する方法があり,プロアクティブ療法と言われる。皮疹が再燃しやすい場合に効果的である。労力を減らしてアドヒアランスを上げることに加え,ステロイド外用薬では局所副作用を減らすこともできる。一方,皮疹が再燃したら速やかに塗布することで悪化する前に消退させるリアクティブ療法は再燃の頻度が低い場合に有用である。

    ステロイド外用薬で寛解導入が困難な場合,シクロスポリン,経口JAK阻害薬,生物学的製剤などの全身療法を併用し,寛解導入を図る。これらの全身療法は寛解維持においても使用できるが,シクロスポリンは適宜休薬が必要であり,悪化時のみ併用するのが良い使い方である。なお,経口ステロイドは重症例や急性増悪時の寛解導入の初期に短期間用いることはあるが,決して寛解維持に用いてはいけない。

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