造血幹細胞レベルで生じた腫瘍化により,すべての系統の血球数が増加し,中でも赤血球数の持続的な増加がみられる。診断時年齢は50~60歳代が多く,30歳未満の若年者発症は稀である。約半数の症例は診断時無症状で偶然みつかることが多いが,血栓症を契機に診断されることもある。総血液量や血液粘稠度の増加が原因で,頭痛,頭重感,赤ら顔,耳鳴りなどの症状がみられる。主な合併症として,血栓症,出血,高血圧などが挙げられる。
汎血球増加をきたすが,中でも赤血球増加が著明である。WHO分類第5版では,総血液量増加の基準として,男性Hb>16.5g/dL,女性Hb>16.0g/dL,ヘマトクリット(Ht)値で男性Ht>49%,女性Ht>48%が挙げられている。ドライバー遺伝子変異として,JAK2 V617F変異をほとんどの症例に認め,一部でJAK2 exon12変異を認める。予後予測の観点から,骨髄生検で骨髄線維化がないか確認しておくことが望ましい。
真性多血症の生命予後は比較的良好であり,脳梗塞,心筋梗塞,静脈血栓症などの心血管疾患の合併が患者の予後に最も影響するため,血栓症の合併を予防することが非常に重要である。具体的にはHt値を下げ,全血液粘稠度を下げることで血栓症を予防する。
治療にあたっては,喫煙,肥満,高血圧,脂質異常症,糖尿病などの血栓症にリスクファクターがあれば,これらの治療は必須である。日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版」では,真性多血症の血栓症のリスク因子として,年齢≧60歳,血栓症の既往が挙げられており,そのいずれかがあれば高リスク群となる1)。リスク因子を有しない低リスク群では,瀉血と低用量アスピリン,高リスク群では,加えて細胞減少療法を行う。瀉血療法,細胞減少療法いずれにおいても,Ht値の目標値は45%未満である。細胞減少療法では,ヒドロキシカルバミドがよく用いられる。ヒドロキシカルバミドは,二次性白血病のリスクの懸念もあることから,若年者では投与をできるだけ控える。瀉血やヒドロキシカルバミドを含む既存治療が効果不十分または不適当な場合は,JAK2阻害薬ルキソリチニブや,2023年3月に承認されたロペグインターフェロン アルファ-2bが選択肢となる。
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