本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)は,骨髄増殖性腫瘍の一病型であり血小板の増加を特徴とする。血栓傾向とともに出血傾向も高頻度に併発する。一般的には中高年以降で発症率が高いが,30~40歳代の若年での発症例も少なくない。
WHO第5版分類もしくはICC(International Consensus Classification)-2022に従うことが一般的である。両分類におけるETの診断基準は実質的に同一である。血液所見,遺伝子変異解析(JAK2V617F変異,CALR変異およびMPL変異)および骨髄生検病理に基づいて診断する。
血栓・出血の合併を減らすことが治療の目標である。まず,血栓・出血のリスクを評価する。従来は,年齢(60歳以上)および血栓・出血の既往の有無の2項目に基づき,いずれかが該当する場合を高リスクと判断した。最近では,遺伝子変異のタイプを取り入れたR-IPSET-T(revised-international prognostic score for ET-thrombosis)を用いることが多い。
60歳未満で血栓の既往がなく,さらにJAK2変異がない場合は超低リスク,JAK2変異を有する場合は低リスクとする。60歳以上であるが血栓の既往がなく,かつJAK2変異がない場合は中間リスク,JAK2変異がある場合は高リスクとする。血栓既往がある場合は,年齢や遺伝子変異によらず高リスクとなる。
低リスクと判断される場合には,アスピリンを使用するが,R-IPSET-Tでの超低リスクの場合には,無治療経過観察とする場合もある。なお,血小板数が非常に高度(一般的には100万/μL以上)の場合には,後天性フォンウィルブランド病を併発し出血傾向のリスクが上昇するため,事前にフォンウィルブランド因子活性を測定することが推奨される。フォンウィルブランド因子活性が30%未満の場合には,アスピリンの使用は控える。高リスクでは,細胞減少療法を併用する。低リスクであっても,著明な血小板増加(100万/μL以上)や脾腫,アスピリンに不応性の血管運動神経症状を伴う場合には,細胞減少療法を考慮することもある。
細胞減少療法としては,ハイドレアⓇ(ヒドロキシカルバミド)もしくはアグリリンⓇ(アナグレリド塩酸塩水和物)を用いることが一般的である。ハイドレアⓇには,骨髄線維症や白血病への疾患進行リスクや皮膚癌などの二次発がんのリスクがあるため,若年者,特に40歳未満の症例への使用は控える。サイメリンⓇ(ラニムスチン)もETへの適応があるが,使用されることは少ない。
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