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慢性硬膜下血腫[私の治療]

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  • ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    血腫が軽微であり無症状の場合は,投薬加療を行う。血液凝固異常,抗血栓薬内服がある場合は血腫増大リスクが高く,また急性増悪する場合もあるため注意を要する。放置された場合は,血腫増大により生命に危険を及ぼすことがある。症候性のものや画像上脳圧迫が強いものは,局所麻酔下に穿頭洗浄術を行う。血腫排除により頭蓋内圧を正常化することができ,症状は比較的速やかに改善する場合が多い。一部の患者は,血液凝固障害の治療や積極的な管理が必要な場合もある。

    術後は血腫の約10~20%の割合で再発による再貯留をきたす場合もあるため,十分な画像フォローアップを行う。再発を繰り返す場合には,血管内手術による中硬膜動脈塞栓術の有効性が報告されている。

    ▶治療の実際

    【投薬例】

    一手目 :クラシエ五苓散料エキス細粒(五苓散料)1回2.0g 1日3回(毎食後)

    【手術】

    局所麻酔後,頭皮を3cm程度切開し,頭蓋骨に直径1.5cmほどの小さな穴をあける。その穴からドレナージチューブを血腫腔内に挿入し,血腫を除去する。基本的には,血腫腔内にチューブを残して手術を終了し,病棟で1日程度,血腫の排出を図る。翌日,CT撮影にて血腫が排除されているのを確認し,チューブは抜去する。その後,1週間程度で抜糸を行い退院となる。高齢者や認知機能低下の患者が比較的多いために,周術期にはせん妄,ドレナージチューブの自己抜去,転倒に注意を要する。

    ▶専門家へのコンサルト

    軽い頭部外傷が発症の原因となることが多く,また高齢者,アルコールをよく飲む人,血液をさらさらにする薬(抗凝固薬,抗血小板薬)を内服している人は発症のリスクが上がる。普段の生活で尻もちをついたり,転倒して頭を打ったりしないように指導を行う。また,脳脊髄液減少症に慢性硬膜下血腫が発生することがある。再発性,両側性の場合には,背景にこの疾患が隠れていることがある。血腫量が少ない場合でも経過観察中に増大,症候化する可能性があるため,脳神経外科へのコンサルトを要する。

    【参考資料】

    ▶ Uno M:Neurol Med Chir(Tokyo). 2023;63(1):1-8.

    ▶ Toi H, et al:J Neurosurg. 2018;128(1):222-8.

    堀江信貴(広島大学大学院医系科学研究科脳神経外科学教授)

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