【質問者】帆足公佑 飯塚病院血液内科
【適切な糸状菌用培地で十分量の検体を接種し,長期間の培養を行う】
血液疾患やその他の免疫不全患者では特に肺における侵襲性糸状菌感染症がしばしば問題となります。血液バイオマーカーであるアスペルギルスガラクトマンナン抗原やβDグルカンなどは採取が容易で有用な場面もありますが,感度に限界があります。感染臓器,すなわち本稿では肺としますが,肺組織を生検で採取し病理と培養検査に提出することが望ましいとされる一方で,侵襲の問題で実施が困難な場合も少なくありません。そこで,古典的ながらも役立つのが喀痰〔あるいは実施可能であれば気管支肺胞洗浄液(BAL)〕の塗抹・培養検査です。得られた検体は一般的なグラム染色に加えてcalcofluor whiteなどによる蛍光染色が有用です。アスペルギルスの菌体は鋭角(45°)に分岐する有隔菌糸で,ムーコルの菌体は鈍角(90°)に分岐する不整で隔壁を有さない菌糸とされますが,塗抹所見だけで菌種の確定は難しく,培養検査が必要です。糸状菌の培養検査は一般的に感度が低いとされますが,感度向上のため喀痰・BALにおいて通常よりも多くの検体量を培地に接種する高容量培養(high volume culture)の有用性が報告されています1)。
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