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嘔気・嘔吐[私の治療]

No.5209 (2024年02月24日発行) P.44

加藤明裕 (名古屋市立大学医学部附属東部医療センター救急科)

登録日: 2024-02-27

最終更新日: 2024-02-20

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  • 嘔気・嘔吐の原因疾患は多岐にわたるため,診断に難渋することがある。主な原因は,①消化器疾患,②心血管疾患,③中枢神経疾患,④耳鼻科疾患,⑤その他(薬剤性,内分泌疾患,中毒など)である。救急外来では,バイタルサインを測定しつつ,緊急性の高い疾患(心筋梗塞,急性大動脈解離,くも膜下出血,腸管虚血など)を念頭に置いて診療を進める。緊急疾患が疑われる場合,各病態に合わせて迅速に治療を開始し,専門家へのコンサルトを行う。緊急疾患が否定できたら,病歴や身体所見,血液・画像検査所見などを総合的に判断し,診断および治療を行う。

    ▶病歴聴取のポイント

    随伴症状,患者背景,発症様式は診断において重要な情報となる。

    【随伴症状】

    ①頭痛・意識障害:脳卒中,髄膜炎,脳腫瘍など
    ②めまい:メニエール病,前庭神経炎など
    ③胸痛:急性冠症候群,大動脈解離,食道破裂など
    ④腹痛:膵炎,胆囊炎,胆管炎,腸閉塞,虫垂炎,胃腸炎など
    ⑤吐血:消化性潰瘍,食道静脈瘤破裂,Mallory-Weiss症候群など

    【患者背景】

    救急外来では,AMPLE(A:allergy,M:medication,P: past history & pregnancy,L:last meal,E:events & environment)を必ず聴取する。NSAIDs,ジギタリス,抗癌剤,麻薬性鎮痛薬など服用歴があれば薬剤性を疑う。腹部の手術歴があれば,腸閉塞を疑う。女性であれば,妊娠の可能性を考慮し,最終月経や性行為歴を確認する。食事内容から食中毒の可能性を考える。飲酒歴で膵炎やアルコール性ケトーシスを想起する。

    【発症様式】

    突然発症では血管性病変,消化管穿孔などを疑う。食後すぐの嘔吐では,幽門狭窄や拒食症などを考える。慢性経過であれば,消化管腫瘍や脳腫瘍などの悪性疾患,ストレス関連障害や気分障害などの精神疾患などを鑑別に挙げる。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    バイタルサインに異常があれば,全身状態の安定化を図る。

    SpO2低下や頻呼吸は,嘔吐に伴う誤嚥や窒息を疑う。血圧低下や心拍数増加では,脱水による循環血液量減少性ショック,急性冠症候群や大動脈解離などを疑う。意識障害があれば脳卒中や中毒などを疑う。発熱があれば感染症を念頭に置く。

    【身体診察】

    鑑別のため,全身診察を行う。特に髄膜刺激徴候・眼振・麻痺などの神経学的所見,腹膜刺激徴候・腹痛部位・腹部手術痕などの腹部所見は診断に重要である。

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