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発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)[私の治療]

No.5209 (2024年02月24日発行) P.45

上野志貴子 (熊本大学病院輸血・細胞治療部)

川口辰哉 (熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科教授)

登録日: 2024-02-25

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  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)は,PIGAなどGPIアンカー合成関連遺伝⼦の変異を特徴とする後天性クローン性造血幹細胞疾患であり,溶血,造血不全,血栓症など多彩な病像を呈する。変異血球はGPIアンカー型膜蛋白(GPI-AP)を細胞表面に発現できず,中でも補体制御蛋白のCD55やCD59の欠損がPNH特有の補体介在性血管内溶血を引き起こす。PNHは国の指定難病(告示番号62)であり,2021(令和3)年の受給者証所持者数は959人であった。診断時の年齢中央値は40歳代で男女差はない。抗補体療法の導入によって溶血コントロールが可能となり,QOLや予後が改善した。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    血管内溶血の症状として,ヘモグロビン(Hb)尿,黄疸,貧血症状などを認めるが,診断時に肉眼的Hb尿を認める例は必ずしも多くない(日米調査で30%程度1))。高度な溶血では,血管内へ遊離した大量のHbが一酸化窒素(NO)を捕捉することでNOが枯渇し,その結果,消化管や血管の平滑筋攣縮による症状(嚥下困難・嚥下痛,腹痛,男性機能不全など)を認めることがある。稀だが,血栓症が診断のきっかけになることがある。

    【検査所見】

    上記症状に加えて,臨床検査で溶血所見(LDHや間接ビリルビンの高値,網赤血球増加,血清ハプトグロビン低値,尿中ヘモジデリン陽性など)が確認できたらPNHを疑い,フローサイトメトリー検査でGPI-AP欠損のPNH型赤血球を1%以上検出することで診断が確定する(外注検査可能)2)

    【重症度分類】

    PNH診療の参照ガイド2)を参考に,溶血の程度や合併症などに応じて軽症,中等症,重症のいずれかを判断し,必要に応じて指定難病登録を行う。LDHが基準値上限の3~5倍程度の中等度溶血もしくは年1~2回の溶血発作を認める場合を中等症と定義し,それ以上の高度溶血(LDHが基準値上限の8~10倍程度)や頻回の溶血発作を認める場合は重症と定義される。溶血により輸血依存となる場合や,血栓症や臓器障害を認める場合も重症に含まれる。

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