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【文献 pick up】日本人CKD例では塩への味覚が低下?―KI Rep誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-02-27

最終更新日: 2024-02-27

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わが国の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」(日本腎臓学会編)では慢性腎臓病(CKD)例に対し「6g/日」未満の食塩制限を推奨している。しかしCKD例における食塩制限の成功率は世界的にも低く、25%前後と報告する研究が多い[Borrelli S, et al. 2020]。この低い成功率の背景には、CKD例における「塩に対する味覚低下」が潜んでいる可能性がある。京都府立医科大学の奥野奈津子[Natsuko Okuno-Ozeki]氏らが200名弱の観察結果として2月16日、Kidney International Reports誌で報告した。

【対象】

今回の解析対象はCKD70例と健常対照群125例である。CKD群は京都府立医科大学腎臓内科受診例から募り、健常対照群は健康診断記録からCKDや生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)のない例を選んだ。

【方法】

これら195例を対象として、「塩味に対する感受性」ならびに「塩辛いと感じる閾値」をCKD群と健常対照群で比較した。

【結果】

その結果まず、CKD群では「塩味に対する感受性」の低下が観察された。すなわち「0.6%」食塩水で健常対照群の49.6%が塩味を感じたのに対し、CKD群では29.9%のみだった。濃度「0.9%」食塩水で比較しても同様だった(健常対照群69.6 vs. CKD44.2%)。また「塩辛いと感じる閾値」も、CKD群は健常対照群に比べて高くなっていた。具体的には、健常対照群では食塩水濃度が「1.5%」を超えると「塩辛い」と感じる例が出始めるのに対し、CKD群では「5.0%」からだった。さらにCKD群では78.6%が、食塩水濃度「20%」でも「塩辛い」と感じなかった。加えてCKD群では食塩水濃度「10%」に対し、84.3%が「塩味」を感じながらも、「塩辛い」と感じたのは15.7%のみだった。

【考察】

奥野氏らは、CKD例における「塩味感受性低下」が食塩制限の成功しない一因ではないかと考えている。加えて「塩辛さを感じる閾値の上昇」の関与も疑っているようだ。そして「閾値上昇」に関与の可能性がある因子として、「男性」と「口腔内衛生不良」を挙げている。

本研究はハウス食品グループとソルト・サイエンス研究財団から資金提供を受けた。

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