【質問者】和田弘太 東邦大学医学部耳鼻咽喉科教授
【分子標的薬で治療の幅は広がったが,治療の基本は手術】
長きにわたり放射性ヨウ素(radioactive iodine:RAI)不応甲状腺癌に対する薬物は皆無に近い状態でしたが1),根治切除不能な再発・転移が生じた甲状腺癌治療において,マルチキナーゼ阻害薬(multi-kinase inhibitor:MKI),RET阻害薬,さらにはBRAF/MEK阻害薬などの登場により治療の幅は大いに広がりつつあります。
中でも2014~6年に根治切除不能な甲状腺癌に適応承認されたMKIは,多くの患者の生命予後を改善するのみでなく,患者がbest supportive care(BSC)となる期間を短縮し,ぎりぎりまで治療を行っているという患者・家族への精神的な支えとなるという効果を,筆者は実感しています。
BRAF遺伝子変異は甲状腺乳頭癌の6割,未分化癌においても10~50%にみられます。BRAF/MEK阻害薬はBRAF-V600遺伝子変異を伴う甲状腺未分化癌に対して高い奏効率を示すことがわかっており,治療の手立てがほとんどなかった未分化癌も含めた,さらなる甲状腺癌治療の武器となることが期待されています2)~4)。
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