腎囊胞は画像検査により一般人口の約40%に認められる。先天性囊胞と後天性囊胞に分類される。先天性囊胞では,小児期に発生する常染色体劣性多発性囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease:ARPKD),主に成人期に発生する常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)が多い。後天性囊胞の頻度がより高いが,囊胞性腎癌の鑑別が必要である。また,末期腎不全患者では,後天性腎囊胞(acquired cystic disease of the kidney:ACDK)もよく認められる。
囊胞性腎癌の鑑別のためのBosniak分類が提唱されており,2019年にupdateされている1)。所見は造影CT,MRIの所見に基づく。
Ⅰ:囊胞壁は薄く造影されない。悪性の可能性はほとんどなく,経過観察は不要。
Ⅱ:囊胞内に薄い隔壁を有するが3cm以下。悪性の可能性は10%以下で,経過観察は不要。
ⅡF:囊胞壁,隔壁がやや厚く造影され,3cmを超える。75~95%は良性だが,経過観察が必要。
Ⅲ:囊胞壁,隔壁が不整で厚く造影される。悪性の可能性が50%で,治療介入あるいは厳重な経過観察を要する。
Ⅳ:明らかに造影される結節を認める。悪性の可能性は85%以上で治療介入を要する。
囊胞性腫瘍に対する経皮的腫瘍生検は,診断率が低く推奨されていない。
多発性腎囊胞を有する場合,ARPKDとADPKDの鑑別が重要となる。ともに腎腫大,高血圧を生じる。ARPDKをより示唆する徴候として,新生児発症,小児期末期腎不全進行,肝脾腫,門脈圧亢進と食道静脈瘤,細菌性胆管炎,家族歴なし,が挙げられる2)。ADPKDをより示唆する徴候としては,家族歴あり,腎外囊胞,脳動脈瘤,無症候性経過,片側腎囊胞,血尿,尿路感染症がある2)。
末期腎不全患者において尿細管上皮が尿毒症物質で過形成を起こすことで,両側多発性の囊胞形成をきたす。囊胞内にがんを発生することが多く,前述したBosniak分類を参考にして診断する。
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