原則として,できるだけ早期に体外補助循環が可能な施設に搬送する。
一手目 :体外補助循環の導入
乳幼児例では体外式膜型人工肺(ECMO),体格の大きな学童以上では経皮的心肺補助装置(PCPS),大動脈内バルーンパンピング(IABP)を装着する。
二手目 :〈一手目に追加〉強心薬として,ボスミンⓇ注(アドレナリン)0.03~0.3μg/kg/分(持続静注),イノバンⓇ注(ドパミン塩酸塩)2~20μg/kg/分(持続静注),ドブトレックスⓇ注(ドブタミン塩酸塩)5~20μg/kg/分(持続静注),ミルリーラⓇ注(ミルリノン)0.25~0.75μg/kg/分(持続静注)の4剤を適宜組み合わせて併用
三手目 :〈二手目に追加〉特異的治療として,献血ヴェノグロブリンⓇIH5%または10%注(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン)1g/kg/日(静注)2日間,ソル・メドロールⓇ注(メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)10mg/kg/日(静注)3日間,併用
巨細胞性心筋炎と好酸球性心筋炎に対しては有効だが,ウイルス性の急性心筋炎に対する有効性は確立していない。
一手目 :心室頻拍,心室細動など致死的不整脈に対して,電気的除細動
二手目 :〈一手目に追加〉アンカロンⓇ注(アミオダロン塩酸塩)初期投与量:5mg/kg(30分以上かけて静注),維持量:10mg/kg/日(持続静注)
一手目 :一時的体外・心内ペーシング
二手目 :〈一手目に追加〉プロタノールⓇL注(l-イソプレナリン塩酸塩)0.01~0.03μg/kg/分(持続静注)
循環不全や体外補助循環中の抗凝固療法の影響で,中枢神経系に梗塞や出血をきたす場合がある。神経学的診察の上で集中治療中から,脳波検査による評価や頭部MRIを検討すべきである。また,成人では心筋炎後の抗心不全療法として,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),β遮断薬の使用が遠隔期の予後を改善することが報告されている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行に伴い,COVID-19に罹患した小児例が感染から2~6週間後に川崎病様の全身の炎症症状をきたすことが,海外を中心に報告されており,小児多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)と呼ばれている。本症候群では4割程度に急性心筋炎を合併することが報告されており,今後わが国でも症例が増加することが懸念される。本症候群に対しては,免疫グロブリンとステロイドの単剤もしくは併用での治療報告が多い。
また,COVID-19ワクチン接種後の心筋炎の報告もあり,こちらは接種3日後の発症報告が多い(ほとんどの症例が接種後1週間以内)。
いずれかの所見から劇症型心筋炎を疑った場合や診断した場合は,急激な状態悪化に備えて,直ちに体外補助循環が可能な施設にコンサルト,搬送する。
治療は特異的な治療ではなく支持療法であることを説明する。また,劇症型か否かにかかわらず,予後については幅が広い疾患であるため,後遺症なく退院する良いシナリオから死亡する悪いシナリオまで,説明が必要となる。
【参考資料】
▶ 日本循環器学会, 他:2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン. 2023.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_nagai.pdf
▶ Matsuura H, et al:Circ J. 2016;80(11):2362-8.
▶ Hoste L, et al:Eur J Pediatr. 2021;180(7):2019-34.
▶ 伊澤美貴:日小児循環器会誌. 2022;38(3):180-5.
白神一博(東京大学医学部附属病院小児科)