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下痢・脱水[私の治療]

No.5215 (2024年04月06日発行) P.40

宮崎ゆか (名古屋市立大学病院救急科)

登録日: 2024-04-03

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  • 下痢の多くは感染性腸炎であり,治療は対症療法である。しかし,細菌感染を疑う発熱,血便,脱水,強い腹痛のある場合は検査を行う。下痢による高度脱水や敗血症では循環不全に至るため,緊急対応を要する。

    ▶病歴聴取のポイント

    下痢の定義は,24時間以内に3回以上の軟便または水様便が排出されることである。まず急性(症状持続が2週間以内)か慢性(症状持続が1カ月以上)かに分類し,続いて感染徴候があるかを考える。病歴聴取は症状の発症時期,重症度(下痢の量,頻度,期間),便の性質,および嘔吐,発熱といった随伴症状を確認する。また,食事内容,旅行歴,sick contact,最近の病歴(入院歴,投薬内容),免疫不全の有無や家族歴についても聴取する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    下痢の状態が重症の場合,脱水による循環血漿量減少性ショックに,また,細菌感染があれば敗血症性ショックに至る可能性がある。バイタルサインと身体診察よりショックの徴候を判断する。

    【バイタル】

    循環不全を示唆する頻拍,血圧低下がないかを確認する。また,qSOFAスコアは敗血症のリスク評価であり,収縮期血圧100mmHg以下,呼吸数22回/分以上,意識変容〔Glasgow Coma Scale(GCS)15未満〕の2項目以上を満たす場合は敗血症が疑われる。

    【身体診察】

    脱水の身体所見として,皮膚のツルゴール低下や口渇感が認められる。また,毛細血管再充満時間(capillary refilling time:CRT)も身体診察における循環不全の判断に役立つ。方法は爪床を5秒間圧迫して離す。血液が再充満して指先に赤みが回復するまでの時間が2秒以上の場合は,循環不全があると判断される。さらに,腹部診察で腹膜刺激徴候(筋性防御,筋強直,反跳痛,打診痛)があれば,外科的介入を必要とする。

    ▶緊急時の処置

    気道・呼吸・循環管理を行う。気道は嘔吐による誤嚥の危険性があるため,吸引等を行い注意する。呼吸に関しては,循環不全や酸素需要がある際は酸素投与を行う。循環不全がある場合は,18~20Gの太い針で正中皮静脈に静脈路を2ルート確保し,乳酸リンゲル液(もしくは生理食塩水)を迅速に投与する。特に下痢により電解質異常(低ナトリウム血症,低カリウム血症)が生じる場合があるため,電解質の補正も同時に行う。

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