左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)に対して、死亡や心血管系(CV)死亡は減少しないものの転帰改善作用が示されているSGLT2阻害薬だが、エビデンスとなったランダム化比較試験(RCT)”EMPEROR-Preserved(P)” や ”DELIVER” の結果が当てはまる患者は実臨床にどれほどいるのだろう。スペイン単施設における連続登録例で検討したところ37%という結果だった。
4月6日から米国アトランタで開催された米国心臓病学会(ACC)学術集会において、マーストリヒト大学(スペイン)のJerremy Weerts氏が報告した。
解析対象となったのはスペイン単施設でHFpEFと診断された連続登録438例である。年齢中央値は76歳、女性が69%を占めた。EF中央値は60%、LAVI中央値は45 mL/m2だった。
これら438例におけるEMPEROR-PとDELIVERでの参加可能(=適格)例の割合を調べた。
その結果、EMPEROR-Pに「適格」だったのは23%、DELIVERも27%だった(いずれにも「適格」の13%を含む)。一方、63%はいずれの試験にも「不適格」だった。
「不適格」の理由として最多だったのは「NT-proBNP基準未達成」で、「不適格」例のうちEMPEROR-Pでは55%、DELIVERでは37%を占めた。両試験ともNT-proBNP基準は「>300 pg/mL」とされていた(AF例は「>900 pg/mL」)。
なお「NT-proBNP」の中央値を比較すると、全体では582 pg/mL、EMPEROR-Pの「適格」例では1476 pg/dL、DELIVERの「適格」例では1116 pg/mLだった。一方、いずれの試験にも「不適格」だった63%における中央値は324 pg/mLである。臨床像の違いとしては、「適格」例の方がより心不全が進展していた(データ提示なし)。
ただし「不適格」例の5年間「CV/突然死・HF入院」発生率は、EMPEROR-P、DELIVERのいずれの「適格」例とも有意差はなかった。
本研究に関し、開示すべきCOIはないとのことである。