株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

サイトメガロウイルス(CMV)再燃・再感染の可能性

No.5218 (2024年04月27日発行) P.51

吉藤康太 (東京医科歯科大学血液内科)

森 毅彦 (東京医科歯科大学血液内科教授)

登録日: 2024-04-29

最終更新日: 2024-04-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

38℃前後の発熱が継続しており,CMV IgG(CLIA)≧250陽性,CMV IgM(CLIA)陰性の場合は,CMV再燃の可能性があると考えてよいでしょうか。または,再感染でしょうか。
(山口県 M)


【回答】

【CMV-IgG高値・IgM陰性をもって,CMV感染症である,あるいは再燃や再感染であると確定することはできないと考える】

はじめにCMVに対する特異抗体について概説します。CMVに対するIgM抗体は初感染後1〜2週程度で陽性となり,数カ月持続して陰性化します。ただ,時に数年にわたって陽性が持続することや,再感染や再活性化で陽性化することもあります。したがって,IgMの陽性化は必ずしも直近の「初感染」を意味するわけではありません。IgG抗体は初感染後,2~3週後で陽性となり,一生涯陽性が持続するのでCMV感染の既往を意味します。ただし,IgG抗体が陽性であっても異なるCMV株に再感染する可能性があり,他の永久免疫があるウイルスとは異なる点には注意が必要となります。

ご質問のケースでは発熱が持続しているということですが,その他,リンパ節の腫大などの身体所見も重要です。IgG抗体高値のみで発熱の原因をCMVであると断定することは難しいと考えます。確定のために,末梢血のCMV抗原血症,あるいはCMV-DNA(核酸)定量検査でウイルス血症を確認する必要があります。ただ,現在わが国ではこれらの検査は「臓器移植後もしくは造血幹細胞移植後の患者またはHIV感染者または高度細胞性免疫不全の患者」に限定されています。また,IgMは陰性ですが,採血のタイミングが発症から時間が経過していると,初感染でも陰性化している可能性もあります。

CMV-IgG陽性者でCMV感染症が疑われ,上記検査でウイルス血症が証明された場合には,再活性化(再燃)が示唆されるため,何らかの免疫不全が背景にある可能性があります。HIV感染症,膠原病などに対する免疫抑制療法などを問診して頂き,発熱以外の肺炎,胃腸炎,網膜炎などの症状や所見がないかを確認するとよいと思います。それらが認められた場合には,速やかな診断と抗ウイルス薬による治療が必要となります1)

【文献】

1) 日本造血・免疫細胞療法学会:造血細胞移植ガイドライン ウイルス感染症の予防と治療 サイトメガロウイルス感染症(第5版). 2022.

【回答者】

吉藤康太  東京医科歯科大学血液内科

森 毅彦  東京医科歯科大学血液内科教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top