東京電力・福島第一原子力発電所の事故から半年間に原発内で発生した傷病者について、長谷川有史福島県立医大教授は10月29日の日本救急医学会総会で、傷病者の約4割は内因性疾患が原因だったと報告した。
原発事故が発生した2011年3月11日~8月31日までに、原発内の医療施設を受診した作業員321人のうち、放射線被曝量の基準値を下回った者は309人。基準値を上回った12人は全員が11年3月に受診した外傷者だったが、高線量被曝による重傷者はなかった。
309人のうち外因性傷病者は185人、内因性傷病者は124人。外因性傷病者では、約46%を軽傷が占めたが、致死的外傷が約1%発生していた。一方、内因性傷病者では、急性冠症候群(ACS)が疑い例を含め8人、脳卒中が疑い例を含め4人発生していた。
これに関してフロアからは「作業員のACS発症率が通常より高く見える」との指摘があった。長谷川氏は「生活習慣病を多く抱える母集団の特性や、防護服を着用し、高温多湿かつ緊張が続く特殊な環境が心筋虚血を誘発するのではないか」との分析を述べた。
今後の原発内の医療の課題について長谷川氏は、内因性疾患が4割を占めたことから「予防医学の視点が重要」と強調。また、作業員の属性が東電社員、契約企業など多岐にわたるにもかかわらず、定型的な疫学データの登録システムが整備されていないことに大きな問題があるとした。