関節リウマチはいまだに原因不明であるため,原因治療は存在しない。メトトレキサートや分子標的治療薬など薬物治療の進歩により,滑膜炎のコントロールと骨関節破壊の抑制が可能になってきたが,最新の薬物治療でも効果不十分となる症例が一定数存在する。患者の長期的QOLを最大限に向上させるという最終目標に向けて,機能再建のみならず整容的な手術も含めた整形外科的治療は依然として重要である。
関節リウマチに対する外科的治療は,多くの場合,リスク・ベネフィットバランスの相対的適応で決定するが,頸椎の高度不安定性など一部に絶対的適応があり,注意を要する。適切に行われた外科的治療は,関節リウマチ患者の短期的・長期的QOLを劇的に向上させる。
手術治療は合併症のリスクを伴う医療行為であるため,期待されるベネフィットがリスクを上回る必要がある。たとえば人工関節置換術であれば,ベネフィットは除痛の一点に尽きるが,リスクには感染,出血など数え上げればきりがない。したがって,保存的治療でADLが十分に保たれるのであれば,手術適応とならないことが多い。一方,関節痛を原因とする身体機能・ADL低下があれば,むしろ医師側から積極的に手術を勧める必要がある。しかし,このリスク・ベネフィットバランスの考え方は患者の個人差が大きく,最終的には患者の希望を含めて相談の上,手術適応が決定される。
手術の絶対的適応は,患者の生命予後に影響が及ぶ場合である。頸椎の高度不安定性,脱臼や亜脱臼などがそれにあたる。疾患活動性コントロール不良の患者では,頸椎の定期的なチェックと,タイミングを逸しない手術が重要である。やや弱い絶対的適応としては,肘関節変形による尺骨神経麻痺,手関節変形による正中神経麻痺,手指の伸筋腱や屈筋腱の断裂,などが挙げられる。
手術の遅延は良好な機能回復を阻害するため,修復を希望する場合には速やかに手術を行うべきである。
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