【質問者】坂井正弘 浦安ツバメクリニック院長
【非アルブミン尿であれば絶対適応ではないが,他のファクターを考慮して投与を検討する】
筆者も「KDIGO 2024 CKDガイドライン」1)を拝見して驚きました。EMPA-KIDNEY試験や DAPA-CKD試験の一連の研究では,正常アルブミン尿<微量アルブミン尿<顕性アルブミン尿でSGLT2阻害薬の効果が高いという印象があったからです。本文を読むと,イベント達成というシンプルな腎エンドポイントではなく,EMPA-KIDNEY試験のeGFR slopeを参照にして推奨しています。サイエンスとしては統計学的に有意なため,「eGFR維持のためにSGLT2iが有効」ということにはまったく異論がありません。問題は「では,どの程度有効か」です。
糖尿病非合併ということなので,long term slopeを見ると,糖尿病なしの群では−1.66 vs. −2.75(mL/min/1.73m2/year)が1.09(0.79~1.39)と,統計学的には有意な差は出ていませんでした。非アルブミン尿であっても尿中微量アルブミン(uAlb)<30mg/gの群では−0.11 vs. −0.89(mL/min/1.73m2/year)が0.78(0.32~1.23)で,こちらも有意な差となっていません(この2つの群を合わせた非糖尿病非アルブミン尿群の解析は,同ガイドラインにも見当たりません)。ちなみに,uAlb 30~299mg/g群でもまだ有意ではなく,uAlb≧300mg/gで初めて有意差が出てきます。uAlbは増えるほど心血管,腎イベントが多いため,このイベント発生が少ない群では,研究ではサイズか観察期間のいずれか,もしくは両方が足りなかったのではないかととらえています。