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糖尿病非合併非アルブミン尿性CKD患者へのSGLT2阻害薬の注意点は?

No.5222 (2024年05月25日発行) P.57

坂井正弘 (浦安ツバメクリニック院長)

長澤 将 (東北大学病院腎臓・高血圧内科講師)

登録日: 2024-05-28

最終更新日: 2024-05-21

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  • 「Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease」(「KDIGO 2024 CKDガイドライン」)では,糖尿病非合併非アルブミン尿性CKD患者(アルブミン尿 <200mg/gかつeGFR 20~45 mL/min/1.73m2)に対してSGLT2阻害薬が推奨(2B)されました。一方で,このカテゴリーに入る腎硬化が主病態と考えられる患者や,フレイル・サルコペニアのある高齢患者など,導入後にうまくいかないケースも経験します。
    CKDの病態を含め,導入に際しての注意点やSGLT2阻害薬の使い分け(ダパグリフロジンやエンパグリフロジン)に関するお考えについて,東北大学・長澤 将先生にご解説をお願いします。

    【質問者】坂井正弘 浦安ツバメクリニック院長


    【回答】

    【非アルブミン尿であれば絶対適応ではないが,他のファクターを考慮して投与を検討する】

    筆者も「KDIGO 2024 CKDガイドライン」1)を拝見して驚きました。EMPA-KIDNEY試験や DAPA-CKD試験の一連の研究では,正常アルブミン尿<微量アルブミン尿<顕性アルブミン尿でSGLT2阻害薬の効果が高いという印象があったからです。本文を読むと,イベント達成というシンプルな腎エンドポイントではなく,EMPA-KIDNEY試験のeGFR slopeを参照にして推奨しています。サイエンスとしては統計学的に有意なため,「eGFR維持のためにSGLT2iが有効」ということにはまったく異論がありません。問題は「では,どの程度有効か」です。

    糖尿病非合併ということなので,long term slopeを見ると,糖尿病なしの群では−1.66 vs. −2.75(mL/min/1.73m2/year)が1.09(0.79~1.39)と,統計学的には有意な差は出ていませんでした。非アルブミン尿であっても尿中微量アルブミン(uAlb)<30mg/gの群では−0.11 vs. −0.89(mL/min/1.73m2/year)が0.78(0.32~1.23)で,こちらも有意な差となっていません(この2つの群を合わせた非糖尿病非アルブミン尿群の解析は,同ガイドラインにも見当たりません)。ちなみに,uAlb 30~299mg/g群でもまだ有意ではなく,uAlb≧300mg/gで初めて有意差が出てきます。uAlbは増えるほど心血管,腎イベントが多いため,このイベント発生が少ない群では,研究ではサイズか観察期間のいずれか,もしくは両方が足りなかったのではないかととらえています。

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