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うっ滞性症候群(皮膚炎,潰瘍,脂肪織炎)[私の治療]

No.5223 (2024年06月01日発行) P.53

天羽康之 (北里大学医学部皮膚科学教室主任教授)

登録日: 2024-06-01

最終更新日: 2024-05-28

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  • 下肢表在静脈である大伏在静脈と小伏在静脈は,交通枝(穿通枝)を介して下肢深部静脈へ流入する。先天性の弁不全や交通枝不全,または深部静脈血栓症などの原因により下肢静脈圧が上昇すると,慢性静脈不全症が引き起こされる。慢性静脈不全症は,静脈高血圧状態による下肢の静脈瘤,浮腫,腫脹,疼痛,皮膚炎,皮膚硬化,潰瘍などを引き起こす。下肢静脈瘤による一連の障害をうっ滞性(静脈瘤性)症候群,皮膚症状をうっ滞性皮膚炎,皮下脂肪組織の線維化を伴ったものを硬化性(うっ滞性)脂肪織炎と呼ぶ。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    下肢静脈瘤は,うっ滞性皮膚炎として下腿に慢性の皮膚炎を引き起こす。下腿の下1/3から足関節部に静脈の拡張,浮腫,出血による紫斑,ヘモシデリンによる色素沈着が混在して暗紫紅色調を呈する。静脈瘤上に丘疹,紅斑を伴い,疼痛や瘙痒を自覚することが多い。小型の象牙色調の陥凹した白色萎縮を認めることもある。慢性色素性紫斑を伴い,下肢の点状出血,毛細血管拡張,色素沈着を認めることもある。進行すると,下腿の皮膚と皮下脂肪組織の線維化により,硬化性脂肪織炎となる。さらに搔破や外的刺激による潰瘍を主に足関節上や下肢正中部に認め,潰瘍部の細菌感染や低栄養などがあると増悪因子となり,難治性下腿潰瘍となることがある。

    【検査所見】

    皮膚生検の病理組織像は,硬化性脂肪織炎では真皮の血管やリンパ管の拡張と壁肥厚,脈管周囲のリンパ球浸潤が認められる。硬化性脂肪織炎では,静脈血栓,皮下脂肪組織の組織球を主とする細胞浸潤を認め,泡沫細胞も認められる。進行すると,線維化や石灰化を認める。

    画像検査として,下肢カラードプラエコー検査により,表在静脈の弁不全や交通枝不全による逆流,表在静脈や深部静脈の血栓の有無,静脈瘤の走行を明らかにする。さらに,下肢静脈造影検査により,表在静脈の拡張・蛇行や不全交通枝の状態,深部静脈血栓による閉塞の有無を確認する。

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