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若年性特発性関節炎(JIA)[私の治療]

No.5224 (2024年06月08日発行) P.45

宮前多佳子 (東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター小児リウマチ科准教授)

登録日: 2024-06-07

最終更新日: 2024-06-04

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  • 若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)は「16歳未満で発症し,少なくとも6週間以上持続する原因不明の慢性関節炎」と定義され,7病型〔全身型,少関節炎型(持続型・進展型),リウマトイド因子(RF)陰性多関節炎型,RF陽性多関節炎型,付着部炎関連関節炎型,乾癬性関節炎型,分類不能関節炎型〕に分類される1)。わが国における推定有病率は,小児人口10万人対年間10.7人である2)。病型により特徴的な合併症や病態の違いが明らかになっている。JIAは発症時の病態で定義されるため,成人となってもJIAとして取り扱われる。本稿では少関節炎型,RF陰性多関節炎型,RF陽性多関節炎型(以下,JIA少関節炎型・多関節炎型)の3病型について述べる。

    ▶診断のポイント

    特に幼少例では関節痛の訴えが乏しく,関節腫脹や可動域制限による運動発達の退行が主訴であることがある。詳細な問診,関節の丁寧な診察は不可欠である。血液検査所見の異常がなくとも活動性関節炎を有する場合があり,臨床診察所見,関節MRI・超音波検査所見などを総合して判断する。RF陽性率はJIA全体の25~30%程度であり,陰性であっても診断の否定根拠とはならない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    JIA少関節炎型・多関節炎型では,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)単独では十分な効果が得られないことが多く,従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARDs)が治療選択の中核となる。

    経口メトトレキサート(MTX)は,「関節症状を伴う若年性特発性関節炎」に対し,わが国で承認されている唯一の csDMARDである。MTX皮下注射製剤は2023年現在,わが国ではJIAに保険適用はない。同じくcsDMARDであるタクロリムスについては,2022年から社会保険診療報酬支払基金により,「難治性・既存治療で効果不十分な若年性特発性関節炎」に対する適応外使用が通知されている。重症例や疼痛が強い症例に対し,ブリッジング療法として,副腎皮質ステロイドの短期的使用を併用する場合がある。副腎皮質ステロイドの全身投与の様々な副作用は既知であるが,小児ではさらに成長抑制のリスクがある。

    生物学的製剤はcsDMARDs不応もしくは不耐な症例に適応を検討する。2023年現在,既存治療で効果不十分な「多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎」に対して,完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤のエタネルセプト,ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤のアダリムマブ,ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体のトシリズマブ,T細胞選択的共刺激調節剤アバタセプトの4剤が承認されている。関節リウマチ(RA)に比較して,適応のある生物学的製剤は少なく,剤形も限定的である。

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